雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 あまりにも予想外の内容に、レニオスは大きく目を見開く。

「……愛人? 愛人だと? はは……っ、勝手に言わせておけ」

 レニオスは笑いながら肩を揺らす。
 申し訳ないが、エノレア・グレイを抱きたいと思ったことは一度もない。美人だとは思うが、それだけだ。

「しかし、これは青嵐宮全体の権威に関わることです。他の宮から嘲笑の的となります!」
「では、どうしろと? なんの落ち度もない新人文官を首にするのか? ただでさえ首が多くて万年人手不足なのに?」
「私に名案があります。我が娘を殿下の専属侍女に任命ください」

 ロングレイン侯爵は、隣に座る娘──リリアナの肩を抱く。リリアナはレニオスをちらっと見て、頬をピンク色に染めた。

(要は、これが言いたくて押しかけて来たのか)

 レニオスは失笑する。

 王族が専属侍女を置くのは一般的なことだが、未婚かつ高位の貴族令嬢となるとその意味合いは全く違う。もしリリアナを専属侍女として迎え入れれば、誰もがレニオスとリリアナが特別な関係であると認識するだろう。

「大した忠誠心だな。もし俺が専属侍女にすれば、お手付きだと見なされるぞ?」
「その覚悟はできております」

 うるんだ瞳に見つめられ、気持ちが冷える。

(子供でもできれば、結婚が早まり儲けものだとでも思っていそうだな)

 専属侍女であれば寝室に忍び込むのも容易いだろう。

「提案には感謝するが、専属侍女は足りている」
「殿下! よくお考え下さい!」
「よく考える時間がないほど忙しいんだ。誰かさんが、どうでもいい話で頻繁に訪ねてくるせいでな」
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