雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
(あるいは、青嵐宮の力をもってしても調べきれないほど精巧な偽装をしている? いや、まさかな……)
青嵐宮の調査能力はリーヴでもトップレベルだ。それを完全に欺くことができるとすれば、国家レベルでの育成が行われた最高ランクの諜報員くらいしか考えられない。
(エノレア・グレイ。不思議な女だ)
謎が多い女であることは確かだが、疑いようのない事実がひとつある。それは、彼女がかなり優秀で使える部下であるということだ。
「エノレアをここに呼んでくれるか?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
エドガーは頷くと部屋を出る。暫くすると、エノレアを連れて再び戻ってきた。
「お呼びでしょうか?」
「ああ、よく来たな」
なぜ自分がレニオスの執務室に呼ばれたのか見当がつかないようで、エノレアはきょとんとした表情をしている。
「ここにきて二カ月以上が経つが、青嵐宮での仕事はどうだ?」
レニオスは、エノレアはすぐに青嵐宮を辞めることになるかもしれないと思っていた。
不正をしている可能性があったし、もし不正していなかったとしても青嵐宮の文官は長続きしない者が多いからだ。
毎年新人を採用しているものの、レニオスのこなす仕事量とレベルに見合う働きをすることができず、一年後も残っている確率は五十パーセント以下だ。