雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
どこからか談笑の声が聞こえてくる。声のほうを見ると、同じ執務室を使っている先輩達が楽しげに話していた。
「──今日はみんなのんびりね」
「うん。ここのところ、御前会議の準備で大忙しだったから。羽を伸ばせるのも今日ぐらいだよ」
オリバーはこそっとエノレアに告げる。
そのとき、執務室の扉が開く。現れたのは、エドガーだった。
「エドガー様。御前会議はいかがでしたか?」
先輩文官のひとりが声をかける。
「我々青嵐宮の存在感を存分にアピールしてきた。レニオス殿下も非常に満足しておられる」
朗らかな笑顔でエドガーが告げると、わあっと室内に歓声が上がる。中には、ハイタッチして同僚と喜びを分かち合っている文官もいた。
御前会議はその名の通り国王の御前で行う会議のことで、三カ月に一回行われる。青嵐宮を始めとする全ての宮殿の主が出席し、担当している地域の状況などについて報告するのだ。
次代の国王にふさわしい王子が誰かを見定める場にもなるので、その重要性は言うまでもない。
「殿下より、本日は特別に早上がりを認めるとお達しがありました。皆、今日はよく休んで明日からまた頑張ってください」
執務室内に、先ほどより大きな歓声が沸き起こった。