雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!

 レニオスは話を切り上げると、腕を組んで目を閉じる。
 馬車の中に、静寂が訪れた。


   ◇ ◇ ◇


 予定通りの視察を終え、エノレア達が帰城したのは夕方近くになってからだった。
 青嵐宮の手前、城下の一番賑やかな通りで、レニオスが御者に「この辺で止めてくれ」と声をかける。

「どうかしたんですか?」

 エノレアは不思議に思って尋ねる。

「お前に菓子をやる約束をしているだろう? 選びに行くぞ」
「え? はい!」

 まさか今日この場で選ぶとは思っていなかったので、エノレアは戸惑いつつも頷く。

「エドガーも一緒に行くか?」
「私は先に青嵐宮に戻って、今日の記録を作成させていただいてもよろしいでしょうか?」
「無論、構わない」

 レニオスは頷く。

「では、青嵐宮に戻ったら、馬車だけここに戻るように手配します」
「ああ、頼む」

 レニオスとエノレアの二人で馬車を降りると、ちょうど夕食の食材を買い求める人々で通りは賑わっていた。エノレアは周囲を見回す。

「この辺にお菓子のお店があるのですか?」
「王室御用達の菓子店がある。そこだ」

 レニオスが指さすほうを見ると、高級宝飾店と見紛うばかりの、石造りの白亜の建物あった。ここに何かの店があることは知っていたが、敷居が高そうなので、エノレアは一度も入ったことがない建物だ。

 ドアマンがドアを開け、店舗に入る。
 店内にはガラスのショーケースがあり、その中には宝石のように美しい菓子の数々が飾られていた。

(うわー。これ、全部お菓子なの?)

 エノレアはびっくりして、その菓子の数々を眺める。
 世の中にこんなに美しい菓子があるなんて、まったく知らなかった。

「好きなものを選べ」
「あ……はい」

 エノレアは恐る恐るショーケースに近づく。
 見たことのないお菓子ばかりで、どれを選べばいいのか迷ってしまう。見ても、味の想像が全くつかないのだ。

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