雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「いいから」
ずいっと菓子を口元に持ってこられ、エノレアは戸惑う。
(このままじゃ、埒が明かないわよね? えーい!)
思い切ってそれを口に含むと、口いっぱいに甘さが広がった。
「美味しい! 何これ!」
「こちらはフルーツゼリーでございます」
「ゼリー? これ、ゼリーなんですか⁉」
エノレアはびっくりして聞き返す。
ゼリーなら、レニオスに招待された晩餐で一回だけ食べたことがある。ただ、それはカップに入っていてもっとトロトロだった。
今食べたものは触感がしっかりあったので、エノレアの知るゼリーとは全く違う。
「こっちも食べてみろ」
次にレニオスが差し出したものは小さな球状のもので茶色かった。
エノレアはそれを見て、眉間にしわを寄せる。
「どうした?」
「いえ……見覚えのあるものに似ているので、少々戸惑いまして──」
エノレアはふいっと目を逸らす。
(何これ⁉ 見た目が完全に鹿のXXなんですけど⁉)
別物だとわかっていても、これを口にするのは勇気がいる。
「ほら」
レニオスはエノレアの動揺など全く気付かぬ様子で、それもエノレアの口元に差し出してきた。
エノレアは覚悟を決め、ぱくっとそれを食べる。