雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
「……美味しい!」
エノレアは感動の声を上げる。鹿のXXもどきのくせに、こんなに美味しいなんて!
「これは、ミルクショコラだ。これを使った菓子が、そこにたくさん置かれている」
レニオスが視線で示したほうを見ると、茶色の菓子が複数並んでいた。
「ミルクショコラ……」
エノレアは初めて聞くその菓子の名前をしっかりと頭の中に刻む。
(お父さんにも見せてあげたいわ。絶対『鹿のXXなんて食うか!』って大騒ぎしたあと、美味しくてびっくりするはず)
その様子が想像できて、エノレアはくすっと笑う。
「どうした? 何か、楽しそうだな」
「父にも食べさせてあげたいなと思いました」
「父? 木こりのか?」
「はい。そうです。このお菓子を見たら、きっとびっくりすると思います」
エノレアは頷く。
レニオスは少し考えてから、「では、お前の父親の分も買おう」と言った。
「え? いいのですか?」
「手紙と一緒に送ってやれ」
「ありがとうございます!」
エノレアは表情を明るくしてお礼を言う。
(お父さん。私、とってもいい上司に恵まれたよ)
手紙は何度か送ったが、それでもきっとエノレアが王都でうまくやれているか心配しているはずだ。このお菓子と一緒に、また手紙を送ろうと思った。