世界で1番近い君と、1番遠い初恋
幸平は唇を噛み締め、絶望したような顔で下を向いた。
「…聞くなよ。俺に…。そんなこと聞くなよ…っ」
幸平の声が小さく震えていた。
まるで、一途に自分を想い続けていた私という存在が、今の幸平にとって何よりの毒であるかのように。
二人の間に流れるのは、甘い再会などではなく、重苦しく息もできないほどの罪悪感とすれ違いだった。
幸平はポケットから手を取り出すと、何気ない素振りで言った。
「あ…そういえば瑠華、5月12日、もうすぐ誕生日だな。3日後は俺だし。……なんか欲しいものあったら言えよ。」
離れていても、幸平の口から自然とこぼれ出た
''3日違いの誕生日''というキーワード。
昔と変わらないその記憶に胸がキュッと締め付けられるのと同時に、今彼の隣にいる彼女の存在が頭をよぎる。
「ううん、大丈夫。幸平は…彼女さんを大事にしてあげて。」
私がそう言うと、幸平は歪んだ笑みを浮かべて、どこか自棄(やけ)になったように呟いた。
「……ああ。そうだな。俺には…それしかないしな。」
背を向けて去っていく幸平の広い背中。
かつて世界で一番近かったはずのその背中は、どんなに手を伸ばしても絶対に届かないほど、遠くに行ってしまっていた。