愛しのオオカミ
修に気付いた美紀は、人の間をすり抜けて席に向かう修へ歩み寄った。


「黒井くん、この前はありがとう」

「…タオル、買ってたのか」

「あ、うん…色違いだけど…二人と一緒の柄にしてみたの…」


嬉しそうに照れて話す美紀の言葉を、亮太は聞き逃さなかった。
美紀の首に掛かる赤いタオルを見た修は、フッと笑みを見せると、バッグにある自分の紺色のタオルを見せる。


「使ってくれてるの…?」

「…本友達からもらったからな」

「ありがとう!」

「…美紀ちゃ」

「はーい、予鈴鳴ったよ~席に着いて~」


笑顔で話していた二人に声をかけようと一歩を踏み出していた亮太だが、担任が入ってきたため、渋々と席に着いた。
タオルを首から外してバッグに入れる美紀は、いまもにニコニコとして始まるホームルームを聞いた。


「えーと、進路調査票、あと三人出てないから、思い当たる人は出してくださいね。それから、明日から体育祭の練習が始まります。それに向けて、一限目は学活に変更して種目決めをしていきます~。じゃあ、体育委員の人、よろしくね」

「はーい」

「じゃあ、今年の種目を書き出すんで、一旦見てくださーい」


数人のクラスメイト立ち上がると、一人が黒板に種目を書いていく。
笑顔だった美紀の表情は次第に曇り、ついには真剣な表情に変わって、書き出された種目をじっと見る。


・200m走・リレー・障害物競争・借り物競争・学年対抗リレー


(障害物…か、借り物競争…か…。障害物の方がいいかな…借り物って知らない人に声かけないといけないかもだし…)


うーんと悩んでいた美紀は、チラリと亮太へ視線を向けると、隣の席の男子生徒と楽し気に話していた。


「一応、希望制にするけど、人気の種目はくじ引きにしまーす。じゃ、名前書いてくださーい」


それを合図に、和気あいあいと各グループの男女が黒板前に集まり、種目を選びながら名前を書いていく。
美紀も、気後れしながらも黒板へと近づき、書き込む順番を待った。


「美紀ちゃん書いた?書く?」

「あ、じゃあ…障害物競争に…」

「あいあーい。…黒井くんは?オレ書くよ?」

「……200m走」

「ほーい」


美紀の後ろにいた修の名前を書き込むと、美紀と同じ障害物に自分の名前を書く亮太。


「亮太~!お前は、リレー二択だろ!」

「なぁんで、オレの人生をリレーで埋めようとすんの…」

「いや、対抗リレーは絶対!足速いじゃん!俺たちを優勝に導いて…!」

「えぇ~…あ、マジで書いたな」


障害物から名前を消されて、リレーと対抗リレーに名前を書き替えられる亮太は、笑いながら自分の席に戻った。
美紀は、少しだけ亮太の様子を見つめてしまった。
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