愛しのオオカミ
「はーい、それじゃあ、人数と名前確認しまーす」
数人の体育委員の生徒たちが、黒板とプリントを見比べては、プリントへ書き込んでいく。
その間、他の生徒たちは待っている間、雑談をした。
美紀は、ソワソワした様子で、思い切って修に振り返った。
「黒井くん、足速そうだよね。200m走出るなら」
「…別に。普通だ」
「わ、私は足遅いから…障害物で頑張ろうと思って」
「……」
「黒井くん足速い!?リレーひとり足りないの!こっちもお願い!!」
ギラリと目を光らせた体育委員のひとりが、修を指名しては手を合わせて頼んだ。
クラスの視線が修に集まるのがわかると、美紀は修をチラリと見る。
「…俺は…」
「黒井く~ん、オレからもお願いする~。一緒にガンバロ~?」
二パッと笑う亮太をジロリと見れば、ため息をついた修は、承諾した。
改めて、決定した黒板に種目と名前が書きだされる。
美紀は障害物、修は200m走とリレー、亮太は200m走とリレーと対抗リレーに決まった。
「無難におさまった~って感じだね」
昼休みに入り、莉奈とお弁当を食べる美紀は、ふふっと笑ってご飯を食べた。
購買部で買ったパンを食べる莉奈は、200m走に出ることがわかった。
「亮太くん、足速いから今年は盛り上がりそうって、体育委員の子たちが嬉しそうだったよ」
「……美紀ぃ~?」
「うん?」
「いつから土師くんのこと“亮太くん”呼びになったの~?」
ニヤニヤと笑う莉奈は、美紀の顔を覗き込んだ。
美紀は顔を赤くさせながら、顔を逸らして、ご飯を頬張って返事をごまかす。
肘で突く莉奈に観念すると、ご飯を飲み込んで口を開いた。
「…いろいろあって…と、友達になりました…あと、黒井くんとも本友達に…」
「ふう~~ん?」
「もう!莉奈っ」
「あははっ!ごめんって。美紀が楽しそうだからさ~。良かったじゃん」
莉奈の言葉に素直に頷く美紀は、お弁当箱をランチバッグへしまった。
ちょうど食べ終えた莉奈も、飲み物を飲んで、食事の挨拶を済ませる。
「だから、体育祭終わるまで、放課後は練習しようと思って!」
「練習?」
「体力作りとか、ダンスもあったでしょ?また変な踊りにならないように…今年はしっかりやろうと思うの!」
「…わかった。同じ組色になれたらいいね。私、部活対抗リレーの方がめんどくさーい。文化部は出なくていいでしょって~」
ため息をつく莉奈に苦笑いしながら、修のため息の姿と重ねてしまった美紀から、笑みが消えた。