愛しのオオカミ
保健室までやってきた修と美紀は、保健室の鍵を開ける保健師に続いて、中に入った。
「ごめんなさいね、すぐにベッドに寝かせてくれる?」
「…はい」
三つあるベッドの真ん中に寝かせると、いまだ浅く息をする美紀を見つめる修。
保健師が、冷え冷えシートや氷枕を持ってきた。
すぐに美紀の額とうなじ部分を冷やしているのを見て、修は近くにあった丸椅子を持ってきた。
「しばらくいてもいいですか」
「え?でも…君、競技あるでしょ。ここは先生に任せて」
「いさせてください」
「…自分の競技までよ。じゃあ、飲み物を買ってくるから、押花さんよろしくね」
「はい」
カーテン越しからドアが閉まる音を聞いたあと、修は美紀へ視線を移す。
「……」
しかし、美紀の顔近くにあるオレンジ色のタオルが目に入ると、手に取って見つめた。
しばらく見たあと、一度目を伏せてから美紀の頭にの近くに置き直す。
「…ん…亮太、くん…」
「……」
うわ言を聞いた修は、椅子から立ち上がると、ベッドに腰かけてから両手を広げて、上半身だけを美紀に覆い被せた。
「…俺だけが……押花…」
「……すー…」
とうとう寝入った美紀の寝息を聞いた修は、寝顔を少し見つめたあと、ゆっくりと体を離して椅子に座り直した。
すると、保健室のドアがガラッと開く音が聞こえ、立ち上がってカーテンを開いて出る。
「戻ります」
「あら、そう?ここまで運んでくれてありがとうね。競技頑張って」
「…失礼します」
保健室から出た修は、そのままグラウンドまで戻っていった。
…—
それから、美紀が目覚めたのは、夕方になりかけた時間だった。
上半身を起こすと、少しスッキリした頭を感じつつ、額に貼られたカピカピに乾いた冷え冷えシートを触る。
「ここ…保健室…?」
まだぼんやりした意識で、カーテンに仕切られた周りを見ると、横にあったオレンジ色のタオルが目についた。
(…亮太くん…?)
「押花さん?起きた~?」
「は、はい…!あの…私…」
「熱中症で倒れたのよ。あぁ、まだ起きなくて大丈夫よ。飲めそうなら水分補給してね」
カーテンの仕切りを開けて、顔をのぞかせる保健師が、経口補水液のペットボトルを渡してきた。
受け取った美紀は、さっそく蓋を開けて少しずつ飲んでいく。


