君の世界に、私はいない
「……え、この人、高校生?」

初めて彼を見たとき、そんなことを思った。

私より少し年上。
それだけなのに、なんだか遠い人に見えた。

ギターを持って、慣れた手つきで弦を鳴らしている。

私はギターを始めてまだそんなに経っていない。
だから、余計にそう見えたのかもしれない。

――大人っぽい。

でも。

正直、最初はちょっと怖かった。

髪色も、雰囲気も、私の周りにいる男の子とは全然違う。

しかも、あとから知った。

彼には、元カノがいた。

「……そりゃ、いるよね」

心の中でそう呟いた。

高校生なんだから。
私より一つ上なんだから。

彼に彼の世界があるのは、当たり前だ。

それなのに。

気づけば、私は彼のことを目で追っていた。

ギターを弾いているとき。
誰かと話しているとき。
ふっと笑ったとき。

別に、好きじゃない。

まだ、好きじゃない。

そう言い聞かせながら、私は何度も彼を見ていた。

ある日、帰り道のこと。

本当は、一緒に帰れると思っていた。

でも、そう簡単にはいかなかった。

私は少し迷ってから、スマホを開いた。

送るかどうか、何度も画面を閉じたり開いたりする。

そして、意を決してメッセージを送った。

返事は、すぐには来なかった。

数分。
十数分。

たったそれだけなのに、長く感じる。

やっと通知が鳴った。

恐る恐る開く。

『真面目ですか?笑』

思わず、笑ってしまった。

なんだ、それ。

でも、そのあとに続いた言葉を見て、胸が少しだけ跳ねた。

『お気をつけて』

たった一言。

たった一言なのに。

その日はずっと、そのメッセージのことを考えていた。

――もしかして。

そんな期待をしてしまう自分が、少しだけ嫌だった。

だって私はまだ知らない。

彼がどんな世界で生きているのか。

どんな人と過ごしてきたのか。

そして――

その世界の中に、私がいるのかどうかも。
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