1ビットも変わらない世界で。
『ねえ、人はね、他人には変えられないんだよ』
いつか、誰かが諦めたような声で言っていた。
どんなに高解像度で相手のバグを指摘したところで、
本人が“直したい”と心から思わなければ、
1ビットだって変わりはしない。
人間が変われるのはいつだって、
自分の醜さに自分で気付いて、
自分で絶望した瞬間だけだ。
変えられない他人の姿は、
これ以上ないほどクリアに見える。
変えられるはずの自分の姿は、
どこまでも泥のように濁って見えない。
私たちはみんな、
この究極のジレンマという檻の中で、
もがきながら生きている。
他人の解像度を下げるか。
それとも、血を流しながらでも
自分の解像度を上げるか。
夜の冷たい空気を吸い込みながら私はただ、
見えない自分の輪郭をなぞるように、
きつく拳を握りしめた。