明日になれば、きっと。

明日になれば、きっと。

あれから、賢斗くんとも上手くいき、名前で呼び合うほどになっていた。

そして、長いようで短かった高校生活も、今日で卒業だ。

まだ、咲ききっていない桜の下で、これまでのことを思い出していた。

昔の自分は、自分がなくて、ずっと、

「陽菜になれたら。」
「清水くんになれたら。」
「石川くんになれたら。」

そう思っていた。

だけど、今は違う。

本当に必要だったのは、「誰かみたいになること」ではなかった。

私は私でいい。

「明るい私」でもいい。
「静かな自分」でもいい。
笑っていてもいい。
泣いていてもいい。

全部、私なんだから。

嫌なことがあったって、『明日になれば、きっと。』

そう思えたのは、賢斗くんのおかげ。

明日になれば、きっと、今日とは違う自分になれる。

この高校生活、無駄なことなんて一つもなかった。
どれも、大切な、一生モノの思い出だ。

「桜!やっと見つけた!」

前から走ってきたのは、今、考えていた人だった。

「桜が綺麗だったから、賢斗くんも写真を撮りにくるかなって思って待ってたんだ。当たりだね!」

そう言っていたずらっぽく笑って見せた。

「もちろん!こんな綺麗な桜を撮り逃すなんてもったいない!ほら桜!横に並んで〜!」

はい、チーズ。

そう言って撮ってもらった写真は、自分で言うのもなんだけど、綺麗だった。

「やっぱり、君は綺麗だ。」

賢斗くんは、写真を撮る度にそう言う。

「ありがとう。賢斗くんのおかげだよ。」

私が、変われる日が来るなんて、夢にも思ってなかったのに。
でも、少しずつなら、変わっていけるものなんだね。

「ありがとう。私を撮ってくれて。」

そう言うと、当たり前のように、

「こちらこそ、撮らせてくれてありがとう。」

高校生活最後の『ありがとう』には、それぞれの、今までに対する思いが込められているようだった。


さようなら。


ありがとう。


またいつか。
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