ノースポールの花が咲く前に〜ルーチェと光〜
ルーチェは息を吐いた。周りを見回せば、現代社会にしかない便利な家電などが目に映る。そして、この世界にはモンスターなど映画の中だけの話だ。

(確かに、便利さではこっちの世界の方がいいだろうね)

ルーチェは迷うことなく詠唱を唱えていく。モンスターが焦ったように言った。

『待て。私を倒せばこの世界で生きられなくなるぞ?平和な世界で生きることの方が幸せだろう?』

「悪いけどさ、そういうのはよそを当たってくれないかな?僕はさ、今のルーチェ・クロウディアの人生に満足してるんだ。今更こっちに戻りたいとかない」

黒い光が杖の先に集まっていく。モンスターが焦ったようにこの世界の娯楽のことなどを話した。しかし、ルーチェの心には何一つとして響かない。

(この世界には、ティムもアーサーもいない。ギルバートさんやラウルもいない。何より、クラル様がいない。そんな世界は、嫌だから……!)

自分はもう望月光ではない。ルーチェ・クロウディアとして人生を歩んでいる。光とルーチェは別人なのだ。
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