ノースポールの花が咲く前に〜ルーチェと光〜
「異世界にもお箸あるんだ」

光は疑う素振りも見せず、感心の目を向ける。ルーチェは心の中で、「前世の僕ってこんな単純だったっけ?」と首を傾げるのだった。

夕食を食べ終え、二人で後片付けを済ませる。ルーチェは窓の外を見た。すっかり辺りは暗くなっている。

「僕、お風呂入ってくるね」

「わかった」

光がパジャマを手に脱衣所へ向かった。どうしようかとソファに座ったルーチェの頭に、したいことがストンと落ちてくる。

(元の世界に帰る方法を考えながら、ちょっとこの辺りを散歩してみようかな)

ルーチェは玄関に向かい、ドアを開けた。前世で当たり前に過ごしていた街が目の前には広がっている。顔を上げて見えた夜空が、どこか狭く感じた。

(懐かしいな。この雰囲気……)

ルーチェは街灯で照らされた夜道を歩いていく。月はまだ顔を出していない。星だけが煌めいている。小さな星の光の一つひとつを見ていたルーチェの頭に、ふとクラルの顔が浮かんだ。
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