一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 コーヒーを飲み終えると、湊さんは庭の隅に敷いてあったラグに目を向けた。
 私はてっきり、そろそろテントの中に入るのだと思っていた。
 けれど、湊さんはそのままラグの上に腰を下ろすと、ゆっくりと寝転がった。
「……何してるんですか?」
 私が尋ねると、湊さんがこちらを見て、手招きをする。
「こっち」
「え?」
 突然のことに、私は戸惑った。
 けれど、湊さんの表情はいつもと変わらない。
 ただ、こちらへ来るように手招きしている。
「寝てみて」
 言われるままにするのは少し戸惑ったけれど、私は湊さんの隣に腰を下ろした。
 ラグの感触を確かめるように、そっと体を預ける。
 そして、並ぶように寝転がる。
 隣に湊さんがいる。
 それだけで、少しだけ緊張した。
 けれど、仰向けになった瞬間――。
「……わあ」
 思わず声が漏れた。
 目の前いっぱいに、夜空が広がっていた。
 さっきまで見ていた庭の景色とは、まるで違う。
 視線を上げれば、そこには遮るもののない空がある。
 都会だから、星はそれほど多くない。
 それでも、街灯の明かりから少し離れた庭では、いくつもの星が小さく瞬いている。
 ひとつ、またひとつ。
 暗い空の中で、静かに光っている。
「綺麗……」
「都会で見えるのは、この程度だよ」
 隣から湊さんの声が聞こえる。
 私と同じように、夜空を見上げているのだろう。
「でも、自然豊かな場所で見る星は、こんなもんじゃない」
「どんな感じなんですか?」
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