一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
嫌なのかと聞かれたら――。
 違う。
 少なくとも、離れてほしいとは思わなかった。
 むしろ。
 このまま時間が止まってしまえばいいような、そんな気持ちさえ、一瞬だけ胸をよぎった。
 次の瞬間――。
 唇に、柔らかな感触が触れた。
「……っ」
 頭の中が、真っ白になった。
 何も考えられない。
 息をすることさえ忘れてしまいそうになる。
 私……今、湊さんとキスしてる?
 夢なのか、現実なのか。
 わからない。
 ただ、触れた唇の感触だけが、はっきりと残っている。
 ほんの一瞬のことだったはずなのに。
 その感触だけが、時間が止まったように鮮明だった。
 胸の奥が大きく鳴っている。
 こんなに近くで感じる湊さんの体温も、吐息も、何もかもが初めてだった。
 やがて、ゆっくりと唇が離れた。
 目の前には、湊さんがいる。
 私はまだ何も考えられずに、その顔を見つめていた。
 色っぽい目で私を見つめながら、ほんの少しだけ口元を上げた。
「俺のわがまま、叶えてくれてありがと」
 そう言って、湊さんはニヤリと笑った。
 ――これが、私の人生で初めてのキスだった。
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