一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「それ知っとって、なんでキスすんねん」
「……したくなったからです」
「二回言うな!」
 思わず声を荒らげたたつさんだったが、次の瞬間には口元が緩んでいた。
「お前、ほんまアホやな」
 呆れたように言いながらも、その顔は明らかに面白がっている。
「……で?」
「何ですか?」
「お前、まさか――」
 たつさんが、にやりと笑った。
「あいつのこと、本気で好きなんか?」
「…………」
 湊は答えなかった。
 答えられなかった、というほうが正しい。
 たつさんは、そんな湊の顔をしばらく眺めてから、
「へえ~~」
 と、妙に楽しそうな声を出した。
「……なんですか」
「いやぁ」
 たつさんはグラスを磨きながら、口元をさらににやつかせる。
「おもろいことになってきたなぁと思って」
「……他人事ですね」
「他人事やもん」
 あっさりと言い切られて、湊は眉を寄せた。
「俺にどうせえ言うねん。彩乃がどう思ってるかなんて、俺にわかるわけないやろ」
「……まあ、それはそうですけど」
「せやろ?」
 たつさんは楽しそうに笑った。
「まあ、好きにしたらええんちゃう?」
「…………」
「ただな」
 たつさんが、湊を見る。
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