一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 けれど。
 私は知っている。
 このパーティーが終われば、私たちの約束も終わる。
 今の生活も終わる。
 湊と一緒に暮らす毎日も。
 朝、隣にいることも。
 帰れば「おかえり」と言ってくれる声を聞くことも。
 何気ないことで笑い合うことも。
 全部、なくなる。
 そのことに気づいた途端、胸の奥が締めつけられた。
 楽しいはずの会場のざわめきが、少しずつ遠くなっていく。
 周りでは、まだみんなが湊に質問している。
 湊は笑って答えている。
 私はその隣で笑っている。
 誰が見ても、仲のいい夫婦にしか見えない。
 なのに、私の中では、もう終わりのカウントダウンが始まっていた。
 あと何時間。
 あと何時間、この人の隣にいられるのだろう。
 そう考えるだけで、目頭が熱くなる。
 泣いてはいけない。
 今日は、みんなが楽しみにしていたパーティーなのだから。
 何より、湊の前で泣くわけにはいかない。
 私は唇を噛んで、必死に涙を堪えた。
 けれど、どれだけ笑顔を作っても、胸の奥に広がっていく寂しさを消すことはできなかった。
 ――終わってしまう。
 その事実だけが、頭の中を何度も巡る。
 安田さんは、彼と話すことで未来を見つけた。
 私も、ちゃんと湊さんと話せばよかった。
 怖がらずに聞けばよかった。
 この先、どうしたいと思っているのか。
 私との生活を、どう思っているのか。
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