一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 たっちゃんは、今度こそ真面目な顔になった。
 さっきまで面白がっていたくせに、私の顔を見れば、やっぱり心配してくれているらしい。
 腕を組み、しばらく考え込んでいる。
「でもなぁ……一か月は厳しいなぁ」
「でしょ?」
「俺が夫役って言うてもなぁ……」
「やめてよ」
 私は即座に顔を上げた。
「何がや」
「ロン毛で髭生やした五十代なんて、誰が見ても夫じゃなくて叔父さんじゃん」
「俺、まだ五十になったばかりやぞ」
「そこじゃない!」
「なんやねん」
「そもそも、たっちゃんが会社のパーティーにいたら、私が恥ずかしい!」
「なんでや。ええ男やないか」
「自分で言う?」
 思わず吹き出す。
 さっきまであんなに落ち込んでいたのに、たっちゃんと話していると、つい笑ってしまう。
 たっちゃんもつられて笑った。
「まあ、俺が行ったら『旦那さんです』言うても、誰も信じへんやろな」
「当たり前でしょ」
 笑ったものの、問題が解決したわけではない。
 一瞬だけ軽くなった気持ちも、すぐに現実へ引き戻される。
 私は再びテーブルに突っ伏した。
「……やっぱり無理だぁ」
「せやなぁ」
 たっちゃんも困ったように呟く。
 可愛い姪っ子のために一緒になって考えてくれてはいる。
 けれど、今のところ出てくるのは、どれも現実味のない案ばかりだった。
「酒は出せるが、男は出せへんしなぁ」
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