一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 それって、さっき私がたっちゃんに話した架空の旦那の条件と、ほとんど同じじゃない?
 思わず、胸が高鳴った。
 もしかして、この人なら――。
「……いや」
 すぐに我に返る。
 何を考えているんだ、私は。
 目の前に現れた条件ぴったりの男を見て、「この人なら」と思ってしまうなんて。
 そもそも、この人は独身なの?
 こんなにハイスペックで、しかもこの容姿。
 独身なわけがない。
 もし私の勤める結婚相談所の会員だったら、間違いなく争奪戦になるレベルだ。
 それどころか仕事柄、そういう男性を何人も見てきた。
 条件のいい男性には、女性からの申し込みが集中する。
 だからこそ、目の前の湊さんがどれほど「結婚相談所的に価値の高い男性」なのか、私は誰よりもよくわかってしまう。
 そんな人が、どうして私のために旦那役なんて引き受けてくれるのよ。
 やっぱり、無理。
「……あの」
 私は湊さんを見上げた。
「もしかして、結婚してます?」
 すると湊は、少しだけ目を細めた。
「してません」
「……独身?」
「はい」
 あまりにもあっさり答えられて、私は目を瞬いた。
 独身。
 こんな人が?
 思わず、もう一度湊さんの顔を見る。
 どう見ても、女性に困っているようには見えない。
 それなのに独身だという。
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