一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「……ほんとに?」
「ほんとです」
 湊さんが苦笑する。
 そのとき、たっちゃんが口を開いた。
「こいつな、もともとは店の常連やったんや」
「そうなの?」
「それで、釣りに行ったり、山登ったりするうちに、いつの間にか趣味友達になってな」
「へえ……」
 私は二人を見比べた。
 たっちゃんと湊が一緒に釣りや山登りをしている姿なんて、今まで想像したこともなかった。
 言われてみれば、たっちゃんは昔からアウトドア好きだ。
 けれど、まさかこんなところで趣味の友達ができていたとは思わなかった。
「まあ、街におるより自然の中におるほうが、女に追っかけられへんしな」
 たっちゃんが冗談めかして言う。
「それ、半分当たってます」
 湊さんがさらりと答えた。
「半分?」
「実際、女性にはよく声をかけられるので」
 そう言いながらも、湊さんの表情に浮かんだのは、嬉しそうなものではなかった。
「……正直、ちょっと疲れる」
「贅沢な悩みやなあ」
「そう言われると思いましたよ」
 湊さんが苦笑する。
「だから、自然の中にいるほうが楽」
 なるほど。
 確かに、こんな容姿で会社まで経営しているのだから、女性が放っておかないのも納得できる。
 本人にとっては、それが面倒になるほどの日常なのかもしれない。
「だったら、なおさらやめといたほうがええんちゃうか?」
 たっちゃんが眉を寄せる。
< 28 / 187 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop