一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「こっちがリビング」
 湊さんについていくと、案内された先には、想像していた以上に広々とした空間が広がっていた。
 大きな窓の向こうには、さっき見た庭がある。
 室内にも余計なものは少なく、家具も落ち着いた雰囲気で統一されていた。
 窓から差し込む光が床に落ちていて、外の緑がよく見える。
「広い……」
 思わず声が漏れた。
「一人で住むには、ちょっと広すぎるけどね」
「ですよね」
 思わず笑ってしまう。
 確かに、一人で暮らすには贅沢すぎるくらいの広さだ。
 私なら、掃除だけで一日が終わってしまいそう。
「キッチンも自由に使っていいから。冷蔵庫の中も、好きに使って」
「はい」
 そう言われて、私はキッチンへ目を向けた。
 こちらも広い。
 私が今まで暮らしていたワンルームのキッチンとは、比べることすらできない。
 ここで料理をするのか。
 そんなことを考えると、これから始まる生活が少しだけ現実味を帯びてきた。
 そのあと、洗面所や浴室、一階のトイレなどを簡単に案内してもらった。
 どこもきれいに整えられていて、生活に必要なものはきちんと揃っている。
 まるで、いつでも誰かを迎え入れられるように準備されていたみたいだった。
「二階に寝室と、君が使う部屋がある」
「私の部屋?」
「ああ。一か月いるんだから部屋がないと困るだろ?」
 さらりと言われて、私は少しだけ驚いた。
 自分がここへ来ることは決まっていたけれど、ここまでちゃんと生活することを考えてくれているとは思っていなかった。
 ただ一緒に暮らすだけ。
 そう思っていたのに。
 ちゃんと自分の居場所まで用意されている。
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