一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 そう考えると、さっきまで感じていた不安が少しだけ軽くなった。
 私が頷くと、湊さんが尋ねた。
「じゃあ、次はいつ休み?」
「え?」
 思いがけない質問に、私は顔を上げた。
「彩乃の休み」
 その呼び方に、一瞬だけ反応が遅れた。
 彩乃。
 名前を呼ばれただけなのに、どうしてだろう。
 胸の奥が、ほんの少しだけくすぐったい。
「ああ……明後日です」
 できるだけ普通に答える。
「じゃあ、その日は一日空けておいて」
「一日?」
「ああ」
 湊さんが少しだけ笑う。
 何をするつもりなのだろう。
 仕事の話だろうか。
 それとも、夫婦として必要な何かをするのだろうか。
 いくつか考えていると、湊さんが続けた。
「次は俺のこと、教えてあげる」
「……湊さんのこと?」
「そう」
 私は思わず湊さんの顔を見つめた。
 今まで知らなかった、湊さんのこと。
 仕事の顔しか知らなかった私にとって、それは少しだけ意外な申し出だった。
 けれど、不思議と嫌ではなかった。
 むしろ――。
 少しだけ、知りたいと思った。
「わかりました」
 小さく頷いた。
 そして私は、そのときになってようやく気づいた。
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