一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 「そうだ」
  湊さんがふと思い出したように言った。
 「ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いい?」
 「はい」
  連れて行かれたのは、私の会社からそれほど離れていないシフォンケーキの店だった。
 「ここ……」
 「知ってる?」
 「はい。前から気になってたんです。でも、まだ食べたことなくて」
 「そうなんだ」
  湊さんは少し嬉しそうに笑った。
 「俺、ここの好きなんだよ」
  店を出ると、買ったばかりのシフォンケーキの箱を手に、湊さんが歩き出す。
  そのときだった。
 「……あら?」
  後ろから、女性の声がした。
  振り返る。
  そこには、二人の女性が立っていた。
  どちらもモデルのようにスタイルがよく、身につけているものも一目で上質だとわかる。
 「湊さんじゃない?」
 「あ、本当だ」
  二人は嬉しそうに湊さんへ近づいてきた。
 「お久しぶりです」
 「この前のパーティー以来ですね」
  湊さんも足を止めた。
 「ああ。久しぶり」
 「最近、全然連絡くれないじゃないですか」
 「そう?」
 「今度、食事行きましょうよ」
  二人は当然のように湊さんとの距離を縮めていく。
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