一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
まるで、そこにいない人間のように扱われている。
それが、なぜかひどく惨めだった。
さっきまで、湊さんと並んで歩いていた。
シフォンケーキの店にも一緒に入った。
それなのに、こうして女性たちに囲まれた途端、自分の立っている場所がわからなくなったような気がした。
この人の隣にいるのは、私じゃない。
そんな気がしてしまう。
「……あの」
ようやく一人の女性が私に気づいた。
「こちらの方は?」
湊さんが答えるより先に、もう一人が笑った。
「新しいお知り合い?」
その言葉に、胸がざわついた。
すると湊さんが、私のほうへ一歩近づいた。
そして、ごく自然な仕草で私の背に手を添える。
「悪いけど、妻と一緒なんだ」
「……え?」
「今日はこのまま帰るから」
湊さんは穏やかな笑顔のまま、二人を見る。
「邪魔をしないでもらえるかな?」
二人の女性が、一瞬言葉を失った。
「……奥さん?」
その声を聞きながら、私はただ立ち尽くしていた。
湊さんの手が、背中に触れている。
そこだけが、熱い。
自分が妻だと告げられたことよりも、突然距離を縮められたことのほうが気になってしまう。
背中に添えられた手を意識するたび、心臓が落ち着かなくなる。
二人と別れてから、私は尋ねた。
「……よかったんですか?」