一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「……ですよね?」
 三好さんの表情が、ほんの少しだけ明るくなった。
「はい。ただ、大切なのは――それが三好さんにとって理想の結婚生活なら、そのことをお相手にもきちんと伝えることです」
「伝える……」
「はい」
 私はゆっくりと言葉を選んだ。
「結婚は、条件だけで決まるものではありませんから」
 三好さんが黙って私を見る。
「たとえば、三好さんが『結婚したら仕事を辞めて、夫に養ってもらいたい』と思っているのなら、それは三好さんの価値観です。それ自体が悪いわけではありません」
「……はい」
「でも、お相手が『結婚しても二人で働いて、一緒に生活を作っていきたい』という考えなら、どちらが正しいとか間違っているという話ではないんです」
「……価値観が違う、ってことですか?」
「そうです」
 私は頷いた。
「だからこそ、自分の望む結婚生活を理解してくれる方を探す必要があります」
「でも……そんなことを言ったら、最初から選んでもらえなくなるんじゃ……」
 三好さんの声が小さくなる。
 その不安は、よくわかる。
 婚活をしていると、自分の希望を伝えることが怖くなる人は少なくない。
 条件を増やせば、それだけ出会える相手が減ってしまう。
 自分の希望を口にすれば、面倒な人だと思われるかもしれない。
 だから、本当は望んでいることなのに、相手に合わせようとしてしまう。
 けれど、それでは結婚したあとに苦しくなる。
 私は三好さんに、少しだけ微笑んだ。
「逆ですよ」
「え?」
「最初から伝えておけば、三好さんの考えに賛同してくださる方と出会いやすくなります」
「……」
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