一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 それなのに、最近は湊さんと過ごす時間が自然になってきている。
 朝、顔を合わせること。
 仕事から帰れば、家にいる湊さんに「ただいま」と言うこと。
 一緒に食卓を囲むこと。
 くだらないことで笑ったり、何気ない話をしたりすること。
 そういう毎日が、少しずつ当たり前になっている。
 以前の私は、それをただ便利な共同生活くらいに思っていたのかもしれない。
 けれど今は――。
 湊さんがいることを、私は心地いいと思っている。
 そのことに気づいてしまうと、なぜだか胸の奥がむずむずした。
「……だから、何なのよ」
 自分に問いかけるように呟いてみる。
 けれど、もちろん答えが返ってくるはずもない。
 結局、私は考えがまとまらないまま家へと向かった。
 そして。
 いつもの道を歩いているうちに、気づけば家の近くまで来ていた。
 門の前で足を止める。
 鞄の中から鍵を取り出そうとして――ふと、思った。
 そういえば、今日は湊さんから何か連絡があっただろうか。
 仕事の都合で帰宅時間が変わるときは、彼から連絡が来る。
 私はスマートフォンを確認した。
 特に何もない。
「……帰ってるのかな」
 そう呟いて、私は門を開けた。
 いつものように敷地へ入り――。
 そこで、足が止まった。
「……え?」
 一瞬、何を見ているのかわからなかった。
 庭に。
 見慣れないものがある。
 いや。
 見慣れないどころか、ありえないほど大きなものが。
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