一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 「…………」
 私はその場に立ち尽くした。
 庭の中央に、大きなテントが張られている。
 しかも、それだけではない。
 その横にはバーベキューコンロ。
 少し離れたところには、見慣れない焚き火台まで置かれていた。
 さらに、テーブルとチェアまできちんと並べられている。
 まるで、庭だけが突然キャンプ場になったみたいだった。
「な、何これ……?」
 思わず声が漏れた。
 昨日まで、こんなものはなかったはずだ。
 そもそも、この庭にテントを張るなんて、一体どういう発想なのだろう。
 私は呆然と庭を見回した。
 テント。
 コンロ。
 焚き火台。
 テーブル。
 チェア。
 何度確認しても、見間違いではない。
「……誰が?」
 そんなことを言いながら、私はすぐに気づいた。
 この家にいる人間は、私と湊さんくらいしかいない。
 ということは――。
「湊さん……?」
 名前を呼んだ、その瞬間だった。
「彩乃、おかえり」
「!」
 背後から声がして、私はびくりと肩を跳ねさせた。
 振り返る。
 そこには、いつもの穏やかな顔をした湊さんが立っていた。
「……湊さん」
「うん」
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