氷の君に、恋の歌を。
飲み物が運ばれてきても、乃愛はまだ少しぎこちなかった。
カップを持つ指先まで意識してしまう。

すると蓮斗が、テーブル越しにじっと見てくる。

「そんなに緊張しなくていい」

「だって……」

「だって?」

「蓮斗くんが、普通すぎるから」

「普通?」

「こういう場所、慣れてそう」

そう言うと、蓮斗は一瞬きょとんとしてから、少しだけ笑った。

「乃愛の前で普通なわけないだろ」

その返しが甘すぎて、乃愛は言葉を失う。

「俺だって、ずっと見すぎないようにしてる」

「え……」

「今日の乃愛、いつもより大人っぽい」

そんなことまで言われたら、もう視線を合わせることすら難しい。

「無理……」

小さくつぶやくと、蓮斗はやわらかく目を細めた。
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