氷の君に、恋の歌を。
静かなテラスで、ふたりの間の空気がやわらかく甘くなる。
学校でも、放課後の教室でもない。
こういう大人っぽい場所でも、蓮斗の隣はちゃんとあたたかい。

乃愛はそっと彼の上着の端をつかむ。
するとすぐに蓮斗が気づいて、やさしく見下ろした。

「どうした」

「……うれしいなって思って」

「何が」

「こういう場所でも、蓮斗くんの隣にいられるの」

それを聞いた蓮斗は、一瞬だけ目を見開いてから、ふっと笑う。

「それはこっちの台詞」

低い声が、風の中でやさしく響く。

少し背伸びした景色の中でも、ふたりの恋は変わらない。
むしろいつもより大人っぽい空気の中で、好きがもっと静かに深くしみこんでいく。
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