氷の君に、恋の歌を。
家の前が見えるところまで来たとき、ふたりは自然に足を止めた。
夜は静かで、街灯の光がやわらかくふたりを照らしている。

蓮斗はつないだ手を離さないまま、少しだけ視線を落とした。

「……帰したくない」

低くこぼれたその声に、乃愛の胸がきゅっとなる。

「蓮斗くん……」

「ちゃんと帰すけど」

少し間を置いて、彼は続ける。

「でも、もう少しだけ一緒にいたい」

その言葉は、甘くて、やさしくて、切なかった。
いつもどこか余裕のある蓮斗が、こんなふうに素直に引き止めてくれることがたまらなくうれしい。

乃愛はそっと彼の手を握り返した。

「私も」

それだけで十分だった。
言葉にしなくても、気持ちはちゃんと重なる。
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