氷の君に、恋の歌を。
しばらくして体を離すと、蓮斗は乃愛の髪にそっと触れた。
その指先がやさしくて、最後まで大事にされているのがわかる。

「おやすみ」

低い声。
でも、そのひと言の中に好きがたくさん詰まっている。

乃愛は少し照れながらも、まっすぐ彼を見つめ返した。

「おやすみ、蓮斗くん」

そして最後に、ほんの少し勇気を出して背伸びする。
触れるだけの、やさしいキス。
短いのに、今日一日の気持ちを全部込めるみたいに。

離れたあと、蓮斗が珍しく少しだけ言葉を失っていた。
その顔がおかしくて、でも愛しくて、乃愛は笑ってしまう。

「最後の、お返し」

そう言うと、蓮斗は困ったみたいに目を伏せてから、小さく笑った。

「……最後までずるい」

夜の静かな道。
名残惜しさも、好きも、ぬくもりも、全部がやさしく胸に残っていく。
きっと明日また会っても、今日のことを思い出すたびに頬が熱くなる。
それでもいいと思えるくらい、ふたりの恋はあたたかく、甘く育っていた。

乃愛の歌も、蓮斗のまっすぐな想いも、重ねてきたたくさんの放課後も帰り道も。
その全部が、ふたりだけの大切な恋の物語になっていく。

そしてこれからもきっと、何度でも。
好きだと伝え合いながら。
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