氷の君に、恋の歌を。
第二章
文化祭の実行委員が決まった次の日、教室は朝からざわざわしていた。
出し物の話し合いよりも、みんなの興味は別のところに向いている。
「今年のステージ発表、うちのクラスも出たいよね」
「去年、賞取れなかったし今年こそって感じ」
「誰か歌える子いないかな」
その言葉に、乃愛の肩がぴくりと揺れた。
手にしていたペンを握る指先に、じわりと力が入る。
やっぱり、そうなる。
学校行事といえば、歌や演奏はつきものだ。
頭ではわかっていたのに、実際にその話題が出ると胸が落ち着かない。
「一宮くん、ピアノ弾けたりしないの?」
「見るからにできそう」
女子の問いかけに、蓮斗は教科書から目を上げた。
「少しだけ」
その答えに、教室が一気に盛り上がる。
「え、すごい!」
「じゃあ伴奏できるじゃん!」
「もうひとり歌える人がいれば完璧じゃない?」
乃愛は思わず息を止めた。
その瞬間、蓮斗の視線がまっすぐこちらに向く。
いや。
だめ。
言わないで。
心の中でそう願ったのに、彼は静かに口を開いた。
「いるだろ」
教室の空気がぴたりと止まる。
「森下」
名前を呼ばれた瞬間、乃愛の胸が大きく跳ねた。
クラス全員の視線が一斉に集まる。
「えっ、乃愛ちゃん歌えるの?」
「ほんとに?」
「知らなかった!」
一気に飛んでくる言葉に、乃愛は顔をこわばらせた。
頭の奥が、あの日のざわめきと重なる。
期待の目。
注目。
そして失敗したあとの、冷たい笑い声。
「……無理」
小さく答えたつもりだった。
でも教室が静かだったぶん、その声ははっきり響いてしまった。
「乃愛ちゃん……?」
戸惑う空気が広がる。
気まずさに耐えきれず、乃愛は立ち上がった。
「ごめん、ちょっと……」
逃げるように教室を出る。
廊下を曲がったところで、速くなった呼吸をどうにか整えようと壁に手をついた。
情けない。
また逃げた。
蓮斗は悪気があったわけじゃない。
わかっているのに、心が追いつかない。
「森下」
背後から聞こえた声に、乃愛は振り返る。
やっぱり追いかけてきたのは、蓮斗だった。
出し物の話し合いよりも、みんなの興味は別のところに向いている。
「今年のステージ発表、うちのクラスも出たいよね」
「去年、賞取れなかったし今年こそって感じ」
「誰か歌える子いないかな」
その言葉に、乃愛の肩がぴくりと揺れた。
手にしていたペンを握る指先に、じわりと力が入る。
やっぱり、そうなる。
学校行事といえば、歌や演奏はつきものだ。
頭ではわかっていたのに、実際にその話題が出ると胸が落ち着かない。
「一宮くん、ピアノ弾けたりしないの?」
「見るからにできそう」
女子の問いかけに、蓮斗は教科書から目を上げた。
「少しだけ」
その答えに、教室が一気に盛り上がる。
「え、すごい!」
「じゃあ伴奏できるじゃん!」
「もうひとり歌える人がいれば完璧じゃない?」
乃愛は思わず息を止めた。
その瞬間、蓮斗の視線がまっすぐこちらに向く。
いや。
だめ。
言わないで。
心の中でそう願ったのに、彼は静かに口を開いた。
「いるだろ」
教室の空気がぴたりと止まる。
「森下」
名前を呼ばれた瞬間、乃愛の胸が大きく跳ねた。
クラス全員の視線が一斉に集まる。
「えっ、乃愛ちゃん歌えるの?」
「ほんとに?」
「知らなかった!」
一気に飛んでくる言葉に、乃愛は顔をこわばらせた。
頭の奥が、あの日のざわめきと重なる。
期待の目。
注目。
そして失敗したあとの、冷たい笑い声。
「……無理」
小さく答えたつもりだった。
でも教室が静かだったぶん、その声ははっきり響いてしまった。
「乃愛ちゃん……?」
戸惑う空気が広がる。
気まずさに耐えきれず、乃愛は立ち上がった。
「ごめん、ちょっと……」
逃げるように教室を出る。
廊下を曲がったところで、速くなった呼吸をどうにか整えようと壁に手をついた。
情けない。
また逃げた。
蓮斗は悪気があったわけじゃない。
わかっているのに、心が追いつかない。
「森下」
背後から聞こえた声に、乃愛は振り返る。
やっぱり追いかけてきたのは、蓮斗だった。