不運すぎる私が入学した学校には、強運すぎるボス?がいました
「いっそのこと、木にでものぼっちゃう?」


ちょうど今いる裏庭に、のぼりやすそうな大きめの木がいくつもある。木のぼりは小学生以来だけれど、まあなんとかなるだろう。

幹に手を伸ばしたところで、後ろから「いいですね、木の上ですか」と声がして……。


「大吉くん!」

「気になってついてきたら、早速臼井さん面白そうなことをしようとしてるじゃないですか」


面白いも何も、こちらは逃げ隠れすることに必死なだけなんですけども。

大吉くんは木を見上げ、手を伸ばした枝を伝ってひょいひょいとのぼっていってしまう。我らがクラス委員長は木のぼりも上手いらしい。
私がほけーっと見ていれば、大吉くんが私へ向かって手を伸ばし「鬼が来る前に、さぁ」と爽やかに微笑んでくれた。ここだけ見れば青春の、ちょっとした恋愛小説の一ページだ。しかしながら私たちの現状は『体育(特)という謎の授業で何をされるかわからない鬼から逃げている最中』である。

とりあえず、気を取り直して…。大吉くんが伸ばしている手に向かって木に足をかけたところで足が滑り、膝を擦りむくことになり……。

──冒頭へ戻る。


ガサガサと木の表面に足を引っかけながら、なんとか木の枝に手が届き、そのまま大吉くんの手を掴み──。


「おい、お前ら何やってんだよ…」

「えっ!?」

「おやおや…」


大吉くんの手を掴み、右足を幹に、左足を枝に乗せたなんともいえない格好のまま顔だけを声のするほうへ向ければ、ピンク髪くんがまたまた呆れた様子で私たちを見ていた。
大吉くんは楽しそうに「見つかっちゃいましたねぇ、もう逃げられませんねぇ」と言っているし、私は私で今の状況から動けないしで混沌……まさしくカオスな裏庭。


「え、どうしよう…」

「どうしようじゃねーよ、降りてこい」

「でも降りたら警察にお世話にならない程度のひどいことするんでしょ?」

「しねーよ、少なくともお前らにしたところでなんも面白くねーだろ」


確かに、大吉くんはどうかわからないにしろ私に何かしたところで面白いことにはならないだろう。鳴らない太鼓よろしく、叩いたとてびえびえ泣くくらいだ。

それじゃあ降りる……?
……どうやって?


「待って待って、この状態でどう降りるの?」

「知らねーよ!」

「臼井さん、実はそろそろ僕の手限界なんです」

「今それ言う!?待って、離さないで大吉くん!」

「まるで少女漫画の台詞みたいですね、それ」

「ごめん!今それどころじゃないかも!」


「お前らマジで何やってんだよ!?」
< 10 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop