学園一の女に一目惚れされて

平穏で居たいだけなのに

 翌朝、学校に着くと案の定学校内は昨日の『望美の行動』と『抱き寄せて居た方は誰なの?』の話題で持ち切りだった。

「おはようございます、南雲さん」

「お、おはようございます……」

「望美様が恐らくあの時間帯に話しかけたのって南雲さんだと思うのですよね」

「そうなの?」

「えぇ、望美様に『もし、南雲さんを見かけたら声をかけて欲しい』とお願いしましたもの」

「どうなの?」

 ザワザワと教室内の空気が期待と不安を感じさせてくる。

「確かに声はかけられました。ですが、抱き寄せられてはいません」

 その声明を聞いたクラスメイト達は安堵して私から離れていった。

 その直後、教室の扉が開き望美が入室して来た。

「おはようございます!望美様」

「おはようございます、皆さん」

 集まったクラスメイトに纏めて挨拶を返した望美が私の隣の席に座る。

 そうすると、自然と昨日のことが思い出され気まずくなった私は望美から視線を逸らした。







 休み時間になると、望美の席には人だかりが出来上がる。

「望美様、今日のお昼はご一緒出来ませんか?」

 まだ一時間目が終わったばかりなのにもうお昼のお誘いをされていた。

「すみません、お誘いしたい方が居るので」

「えっ!?」

「の、望美様?お誘いしたい方って……」

 すると望美は人混みを掻き分けて私の席にやって来た。

「南雲さん、今日のお昼ご一緒させて頂けないかしら?」

 望美が私を誘った瞬間、辺りから悲鳴が響き渡る。

「え……っと、すみません。別の方との先約がございますので」

 私はそう言って望美からの誘いを断った。

 クラスの空気を乱したくない、目立ちたくない、ぼっちにもなりたくない。

 そんな思いで過ごしてきた。

 だが、毎朝一番に望美に挨拶をしている彼女達の視線と表情で私はクラスメイトに敵と認識され、孤立していることに嫌でも気付いた。

「ちょっと、望美様のお誘いは最優先事項でしょう?」

「そうですよ!望美様、やはり我々と共にお昼をしませんか?南雲さんは望美様より大事なご予定があるようですし?」

「別に最優先事項ではないですし、それにご予定があるのなら仕方ないわ」

 望美が彼女達を宥めるが、彼女達の怒りは治まらなかったようで彼女達の冷ややかな軽蔑の視線をひしひしと感じられる。

 そんな気まずい空気を掻き消すようにチャイムが鳴り響いた。







 お昼、私は中庭で心愛を待っていた。

「お待たせー!」

「もー!遅いよー!」

「そんなことより!聞いたよ、アンタ……望美様にお昼誘われたんだって?」

「うん」

「なんで断ったの?」

「いつも言ってるでしょ、興味無いって。しかも望美様ファンクラブを敵に回したくないし」

「でも、その望美様ファンクラブの方々は結芽を敵だと認識してると思うけど」

 心愛はそう言って、ウィンナーを摘み取り口に運ぶ。

「そう……だよね。望美様を第一にしてる所だもんね」

「かと言って、望美様と仲良くしても嫉妬で敵にされてるんだろうけどね」

「だよねー……あー終わった……」

「まぁまぁ、そう諦めなさんな」

「心愛〜……」

 よしよしと心愛は私の頭を撫でる。

 その温もりにほんの少しだけ安心する。








 昼休みが終わって教室に戻ると、案の定クラスメイトからの鋭く冷たい視線が突き刺さる。

 その視線をシカトして席に着くと、望美も席に着きメモを渡してきた。

 そこには『一緒に今日の放課後帰りませんか?あと、メッセージも交わしたいです』と書かれていた。

 その様子を見ていたクラスメイトがヒソヒソと話し始める。

 もう居た堪れない空気に耐えつつ、必死に頭を働かせて私は丁寧にお誘いを断った。






 季節は過ぎ去り夏がやって来た。

 もうすぐ夏休みともあってみんなどこか浮かれている。

「望美様、夏休みはどこかご旅行に行かれるのですか?」

「ううん、今年は来年に備えて学校見学と勉学をしようと家族会議で決まってしまったの」

「でも、流石望美様です。誰よりも早く将来についてお考えになられていらっしゃるんだもの」

「親が神経質なだけよ、皆は旅行を楽しんで」

「はい!」

 あれから、望美からのアピールは落ち着きクラスメイト達も落ち着き始めていた。
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