ゆびきりげんまん
「颯真兄ちゃん!」
「ん?」
「ゆびきりしよ!」
小さな手が、俺の前に差し出された。
ぴん、と立っているのは小指。
「なんの?」
「すずが大きくなったら、お嫁さんにしてくれる約束!」
「せえへん」
「なんで!」
五歳のすずが、ぷくっと頬を膨らませる。
俺は十一歳。
六つも年下のこいつは、昔から何かにつけて俺の後ろをついてくる。
「じゃあ、今決める!」
「決めへん」
「決める!」
「決めへん」
「むぅぅぅ……」
すずが俺を睨む。
怖くもなんともない。
むしろ、膨らんだほっぺたが餅みたいだった。
「なんや」
「小指!」
「嫌や」
「出して!」
「嫌やって」
「颯真兄ちゃん!」
あまりにもしつこいから、仕方なく小指を出した。
その瞬間。
すずの顔が、ぱあっと明るくなる。
「えへへ」
「笑うな。約束してへんからな」
「するの!」
小さな小指が、俺の小指に絡んだ。
そして、すずは大きく息を吸う。
「ゆ〜びき〜りげ〜んま〜ん♪」
「…………」
「ウソついたらぁ〜♪」
そこまでは普通だった。
「颯真兄ちゃん、すずにチュウ〜する〜♪」
「…………は?」
満面の笑みですずが俺を見る。
「ゆびきった!」
「待て待て待て。なんや今の」
「ゆびきりげんまん」
「ちゃうわ。最後や」
「チュウするんやで?」
「アホ。どんな替え歌や」
「だって、みきちゃんとたぁくんがチュウしてたもん」
「知らんがな」
「颯真兄ちゃん、すずにチュウするん嫌なん?」
「そういう話ちゃう」
「じゃあ、ええやん」
「よくない」
「約束したもん!」
「してへん!」
「した!」
「してへん!」
「したぁ!」
絡めた小指を離さないまま、すずが笑った。
俺は知らなかった。
この訳の分からない約束を――。
こいつが、ずっと覚えていることなんて。
――十五年後。
「颯真兄ちゃーんっ!」
…………。
まだ呼ぶんかい。
「ん?」
「ゆびきりしよ!」
小さな手が、俺の前に差し出された。
ぴん、と立っているのは小指。
「なんの?」
「すずが大きくなったら、お嫁さんにしてくれる約束!」
「せえへん」
「なんで!」
五歳のすずが、ぷくっと頬を膨らませる。
俺は十一歳。
六つも年下のこいつは、昔から何かにつけて俺の後ろをついてくる。
「じゃあ、今決める!」
「決めへん」
「決める!」
「決めへん」
「むぅぅぅ……」
すずが俺を睨む。
怖くもなんともない。
むしろ、膨らんだほっぺたが餅みたいだった。
「なんや」
「小指!」
「嫌や」
「出して!」
「嫌やって」
「颯真兄ちゃん!」
あまりにもしつこいから、仕方なく小指を出した。
その瞬間。
すずの顔が、ぱあっと明るくなる。
「えへへ」
「笑うな。約束してへんからな」
「するの!」
小さな小指が、俺の小指に絡んだ。
そして、すずは大きく息を吸う。
「ゆ〜びき〜りげ〜んま〜ん♪」
「…………」
「ウソついたらぁ〜♪」
そこまでは普通だった。
「颯真兄ちゃん、すずにチュウ〜する〜♪」
「…………は?」
満面の笑みですずが俺を見る。
「ゆびきった!」
「待て待て待て。なんや今の」
「ゆびきりげんまん」
「ちゃうわ。最後や」
「チュウするんやで?」
「アホ。どんな替え歌や」
「だって、みきちゃんとたぁくんがチュウしてたもん」
「知らんがな」
「颯真兄ちゃん、すずにチュウするん嫌なん?」
「そういう話ちゃう」
「じゃあ、ええやん」
「よくない」
「約束したもん!」
「してへん!」
「した!」
「してへん!」
「したぁ!」
絡めた小指を離さないまま、すずが笑った。
俺は知らなかった。
この訳の分からない約束を――。
こいつが、ずっと覚えていることなんて。
――十五年後。
「颯真兄ちゃーんっ!」
…………。
まだ呼ぶんかい。