理恵の告白

出逢い

出逢い

龍太郎と理恵が出逢ったのは、一年前のことだった。
二人が出逢った場所は、精神科のデイケア。66歳の龍太郎と28歳の理恵。年齢も生きてきた時代も、まったく違う二人だった。それでも、理恵は初めて会ったその日から、龍太郎のことを「龍太郎さん」と呼んだ。
「龍太郎さん、LINE交換してもらえませんか?」
出逢ったばかりなのに、いきなりLINE交換を求められた龍太郎は、思わず驚いた。
「えっ……今日、初めて会ったばかりだよね?」
龍太郎にとって、初対面の若い女性からLINE交換を求められることなど、想像もしていなかった。理恵は、そんな龍太郎の戸惑った表情を見て、ニッコリと笑った。この日から、二人の一年にわたる不思議な関係が始まった。その夜。布団に入った龍太郎の脳裏に、理恵の姿が浮かんだ。初めて会ったばかりなのに、なぜか気になる。
「龍太郎さん」と呼んだ声や、ふっと見せた笑顔が、何度も頭の中によみがえってくる。龍太郎は、天井を見つめながら苦笑した。
「俺は、いったい何を考えているんだ……」
まだ恋だとは思っていなかった。ただ、今日出逢ったばかりの28歳の女性が、なぜか心の片隅から離れなかった。その日の夜。理恵も自宅に戻ると、龍太郎のことを思い出していた。
「龍太郎さんって、不思議な人……」
66歳という年齢からは想像できないほど話しやすく、若い自分にも自然に接してくれた。今日、初めて会ったばかりなのに、どうしてLINEを交換したいと思ったのだろう。理恵自身にも、はっきりした理由は分からなかった。ただ、もう一度話してみたい。もう少し龍太郎のことを知りたい。そんな気持ちが、時間が経つほど強くなっていた。理恵はスマートフォンを手に取った。龍太郎の名前を見つめる。メッセージを送ろうか、それとも今日はやめておこうか。しばらく迷った末、理恵はスマートフォンを伏せた。
「明日、また会えるし……」
そう呟いたものの、理恵の顔には自然と笑みが浮かんでいた。翌日。デイケアで顔を合わせると、理恵が笑顔で龍太郎に近づいてきた。
「龍太郎さん、勉強した?」
「したよ」
龍太郎は、少し得意げな顔をした。そして、昨日の夜、自宅でスマートフォンを片手に、なにわ男子や道枝駿佑について調べたことを理恵に話した。
「なにわ男子って7人組なんだな。道枝駿佑って、俳優としても人気があるんだってな」
「へえ、ちゃんと勉強したんだ」
理恵は嬉しそうに笑った。龍太郎は照れくさそうに頭をかいた。
「俺だって、令和の恋愛ドラマを書くんだからな」
その言葉を聞いた理恵は、少しだけ表情を変えた。
「じゃあ、龍太郎さん。次は恋愛そのものを勉強しないとね」龍太郎は、その言葉にドキッとした。

「ちゃんと令和の恋愛を勉強してるみたいね」
「そうか?」
「ええ。でも、小説って書き出しが命よね」
理恵はそう言って、いたずらっぽく笑った。龍太郎は、その笑顔を見ながら、頭の中に浮かんだ言葉をゆっくりとつぶやいた。
「水色の出逢いから、物語は始まる……」
理恵は嬉しそうにうなずいた。そして理恵から提案を受けた。
「恋は一発逆転、皆んな、続きを読みたいから続きを書いたらいい」
そうやって、龍太郎の作品「恋は一発逆転」が完結した。
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