帝都の夜にあなたを拐う〜怪盗と華族令嬢の恋〜
大正の最先端を行く銀座の街に、追っ手の甲高い警笛の音が聞こえてくる。
「あなたを盗んだのですから、追っ手が来るのも当然のこと」
「大丈夫でしょうか?って、盗まれた私が言うのも可笑しいですね」
「フフフ。確かに。でも、大丈夫。僕は怪盗ですから」
彼は、少年みたいに悪戯っぽく笑った。
二人の顔に笑みが零れる。
今、ここは二人だけの自由な夜が広がっている。
ー*ー*ー*
柳並木に賑わう群衆をすり抜けるように、怪盗『デイドリーム(白昼夢)』は、私を抱いたまま華麗に、そして、驚異的な跳躍力で、帝都随一のモダンな建物の屋上へ、影のように降り立った。
「見事な跳躍力ですわ!」
「怪盗は、鳥人(ちょうじん)のように空を飛びません。今、お見せした跳躍力にもトリックがあるのですよ」
「どんなトリックですの?」
「それは、まだ秘密ということで」