恋愛は業務外につき。


鳴瀬さんの口から出た、その言葉。

辞めればいいって、そんな簡単に。

人手が足りてないっていうのもわかってるはずなのに。

……優しいな、琉くんは。


「……やめませんよ。体も壊さないように気をつけます」


ぎゅっとハンドルを握った。


「そっか。まー無理しないでね」

「無理はします」 

「えっ」

「マネージャーの仕事って、きっとそういうものなので。担当のタレントが頑張ってるんだから、私も頑張らないと。琉くんと並べるぐらいのレベルになります」


シン……と静まり返った車内。

……私、変なこと言いました?


「……杏莉ちゃん、今、琉くんって」

「え。あ」


やばい、完全に無意識で言った。


「聞き間違いです」

「聞こえたけど」

「聞き間違いです」

「えぇー」


誤魔化すように車を走らせ、前だけを見つめる。

安全運転だから!!


「杏莉ちゃん、オレのこと好きなの?」


ちょ、これ以上掘り下げないでっ……。

てかなにそのナルシスト思考!


「……タレントとしてなら」


平坦な棒読みでそう答えると、あはっと笑われる。


「タレントって肩書き、なくても好き?」

「それは仕事に関係ないですよね」

「気になるじゃんか」


バックミラーに映った鳴瀬さんは、悪っぽい笑みを浮かべてこっちを見ている。

……あれ、爽やかな好青年だよな、鳴瀬さんって。

こんなに距離詰めてくる人だっけ。


「杏莉ちゃん、ガード固いね〜」

「なんのことですか……あ、見えましたよ。駐車場に降ろすのでいいですか」

「せっかくだし上がっていきなよ」


たっぷり五秒はフリーズしたと思う。


「……えっと。もう一回言ってもらっても?」

「家上がっていきなよ。片付けしてくれると嬉しい。お茶出すよ」

「……はい?」

「今めちゃくちゃ家汚くて。オレの専属マネージャーでしょ? 杏莉ちゃん」


推しの?? 家に?? 片付けしに行けって??

駐車しながら頭の中でぐるぐる考える。

あ、でもここで引いたら「やっぱファンじゃん」とか言われそうっ。

それなら……!


「……やってやります。マネージャーの業務ですもんね、タレントの生活管理は」


多分普通はそこまでしないけど、苦し紛れの言い訳だ。

「いーの? やったー」と軽い返事が返ってきた。

……ピッカピカにして帰ってやろう……。

*ーーー*


「……思ったより、いや結構散らかしてますね」
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