ギャルが異世界にトリップしたら、暗殺一家の大公子とスパダリ婚する事になりました

27.異世界で、大捜査編開幕しまーす③

バトルロワイヤル会場に向かっているのは、甘野芣婭達だけではなかった。

仮面を嵌めたルカリオの付き添いで河邉菜穂、アズバルト、ケルベロスの面々が闇市場(ブラックマーケット)の出店を見て回っている。

店には蛇や蛙、不思議な形をした魚や小鳥が瓶の中にホルマリン漬けのようにされてる物が売られ、怪しげな色をしたポーション、煙草なども売られていた。

「やっぱり、残った商人達だけだと、店の規模も小さいなぁ」

「ここはどういう場所なんですか?みんな仮面を着けているみたいだし…」

「闇市場(ブラックマーケット)と呼ばれる場所だ。表立って変えない商品などが売られ、客達の欲望が叶う場所だ」

河邉菜穂の問いに淡々と答え、ルカリオは目的の商品が売られていないか視線だけで探す。

ルカリオの腕にしがみつきながら出店の商品に目を向けるが、彼女自身が全く興味がない。

鉄の折の中に閉じ込められている獣人族の少女と目が合い、河邉菜穂は思わず足を止めてしまうと、ルカリオは不機嫌な声を出した。

「何故、足を止めた」

「ご、ごめんなさいっ。耳のついた女の子と目が合ったから、つい…」

「あぁ、商人に捕まった奴隷か」

「ど、奴隷って…、あの奴隷ですか?」

「愛想のない子供でも、変態の貴族達に買われてい
く。どういう扱いをされているのか分からないが、まともな扱いはされていないだろうな」

ルカリオの話を聞いた河邉菜穂は、少女から視線を外した時、聞き覚えのある声が彼女の耳に入る。

「ランスロットさんは、ギルベルト君のお手伝いをしに来たの?」

「それもあるけど、どんな感じの店になってるのかも見に来たんだよねぇ。あ、妹が君に会いたがってたよ」

恐る恐る声のする方に視線を向けると、美形に囲まれたネイビー色の髪の少年が楽しそうに話をしている姿が視界に入った。

河邉菜穂は少年の姿を見て、甘野芣婭が男装しているとすぐに分かり、唇を強く噛んでしまう。

美形に囲まれている甘野芣婭はとても楽しそうで、特にオールバックにセットされたギルベルトと甘野芣婭の雰囲気がとても良い。

ギルベルトが甘野芣婭に向ける甘い視線、言葉、行動、河邉菜穂がルカリオにしてほしい事を、甘野芣婭は簡単に貰えている。

【何で、あの子ばっかり幸せなの?私と同じで、異世界に飛ばされたんじゃないの?】

【私の好きになる男は芣婭の事を好きになって、付き合った後に奪っても別れを切り出され、芣婭とヨリを戻したがる】

【あんな甘えん坊で、赤ちゃんみたいな子が良いの?私だって、可愛くなる為に努力してるのに】

河邉菜穂の中で沸々と沸き上がる嫉妬の炎が、彼女の理性を崩壊させていく。

この苛々をどうしたら晴らせるのか、河邉菜穂が悶々と考えているとケルベロスの女の子が声をかけた。

「奴隷でも買って、苛々を発散したら?」

「え?な、なに言ってるか分かってるの?」

「お姫様の事を見つけちゃったんでしょ?だったら、誰でも良いから叩いて、気分を発散させたら良い。ここには奴隷を叩いた貴方の事を、責める者はいない」

「それは…」

「ルカリオ様ー」

ケルベロスの女の子はルカリオに声をかけ、河邉菜穂が言いやすい状況を作りあげる。

「何だ、アウラ」

「菜穂様に、あの奴隷の女の子を買ってあげてくれませんか?」

「奴隷の少女を?」

ケルベロスの女の子をアウラと呼んだルカリオは、鉄の檻の中にいる獣人の少女に視線を向けて靴元を緩ます。

アウラの目的が分かったのか、ルカリオは河邉菜穂に優しく笑い掛け、手を取ると河邉菜穂は顔を真っ赤に染め上げる。

「あの娘が欲しいのか?」

「えっ、あ、あの…っ、はい…。わがままを言うとそうなります」

「お前はこちらの世界に来て、まだ日が浅い。ペット感覚で育ててみると良い」

「ルカリオ様、私に優しくしてくれるんですね。私、すっごく嬉しいですっ、大事にされているんだなって思えて…」

河邉菜穂がルカリオに対して愛を囁いてる中、ルカリオはアズバルトに視線だけで指示をした。

アズバルトはすぐに鉄の檻の前に立っている商人の元に向かい、金銭のやりとりを済ませてルカリオの元に戻って来る。

「殿下、購入の手続きが終わりました」

「ご苦労。菜穂、あの子はもう君の物だ。アズバルトと共に、少女の事を迎えに行ってくれないか?」

ルカリオの優しい笑顔と言葉を投げかけられた河邉菜穂は、満面の笑顔でアズバルトの方に顔を向けた。

「分かりました!アズさん、ついてきてくれる?」

「かしこまりました、菜穂様」

河邉菜穂とアズバルトが側を離れた後、スッと無表情に戻ったルカリオがアウラに声をかけた。

「これで良いのか?アウラ。あの女に優しくしろと言われてしているが、調子に乗るだけじゃないのか」

「あの女はルカリオ様の事が好きですよね?河邉菜穂に力は今後、必ず必要になってきますし。命令しやすい状況を作り上げておいた方が良いかと。それから、

ここに変装した甘野芣婭がいます」

「芣婭が!?ど、どこにいるんだ!?」

「今は近付くのは、やめておいた方が良いですよ。お

姫様の周りには王子様と騎士達が、周りを固めて行動してるし、私の兄弟もいるから」

アウラの話を聞いたルカリオは、怪訝そうな表情を浮かべながら舌打ちをする。

「ギルベルト共か、僕の芣婭の周りをのさばりやがって。だが、気晴らしに遊びに来て正解だったな。恐らく、ここら一帯に黒騎士団(ブラックナイト)の連中が取り囲んでるだろう」

「ルカリオ様風に言う偽善活動でしたっけ?」

「あぁ、ここも摘発するつもりだろ。保護した獣人族や龍人族を各国に送り届け、父上を差し置いて両国と良好な関係を築こうとしてる。この国の皇帝になったつもりか知らないが、馬鹿馬鹿しい」

「お待たせしましたっ、ルカリオ様!あ、アウラと話の途中でしたか?」

購入した獣人の少女を連れて戻って来た河邉菜穂は、ルカリオとアウラの顔を交互に見て申し訳なさそうにした。

ルカリオは俳優並みに表情をすぐに変え、河邉菜穂の腰を抱いて耳元で囁く。

2人にしか分からない会話を楽しみ、獣人の少女には目も止めずに、ルカリオは目的のバトルロワイヤルに会場に足を向ける。

変われた獣人族の少女は不安げに河邉菜穂をみつめ、視線を感じた河邉菜穂は優しく微笑んだ。

***

甘野芣婭 (17歳)

ランスロットさんの後ろを歩いていると、ピエロの恰好をした男がベルを鳴らしながら叫んでいる声が聞こえてきた。

バニーガールの恰好の女の人達がビラみたいなものを配っていて、何が書かれているのか確認する為、地面に落ちているビラを拾おうとすると、男の人の手が先に伸びる。

視線を向けると、レヴァさんが拾ってくれたようで、ビラについた砂を払ってから芣婭に渡す。

「ふ…、ではなく、坊ちゃま、こちらを」

「ありが…、ゴホンッ!ふむ」

いつもの感じでお礼を言いそうになり、すぐに言い直してからビラを受け取る。

獣人族の男の人と魔獣らしいき動物のえが書かれ、バトルロワイヤルで行われる試合内容だと言う事が分かった。

「あっ、ガゼルッ!」

芣婭に抱っこされているゼパ君がビラを見て、ガゼルの名を口にする。

「さぁ、さぁ、まもなく試合が開催されます!このバトルロワイヤルの名選手である奴隷獣人のガゼルと狂暴のオーク、どちらに勝利を賭けますか!!!」

「俺はガゼルに10,000ドロップ!」

「いや、今回はオークだ。LovePoison(ラブポイズン)を使用しているんだろ?さすがのガゼルも勝てないんじゃないか?」

「LovePoison(ラブポイズン)を使用していた魔獣達に勝ってきただろ?今回もガゼルが勝つぞ」

客達がチケット売り場と思われる屋台の前に集まっており、ピエロの恰好をした男の人に金色のドロップ型のコインを渡していた。

あれはコイン?と言う事は、この世界のお金って事になるよね?多分。

「10,000ゴールドドロップか、ガゼルの掛け金が前より跳ね上がったなぁ。数日前までは、5,000シルバードロップだったのに」

「ここの闇市場(ブラックマーケット)稼ぎは、ガゼルが稼いでるんだろう。小規模な闇市場(ブラックマーケット)だと、商品の品揃えが悪いんだろう。バトルロワイヤルに力を入れているのが分かる」

「ギルが2ケ月前に摘発した時は、ガゼルの姿はあった?」

「いや、ゼパの姿もなかった。俺達が来る前に、ガゼルとゼパ達を別の場所に移動させて…。ランスロット、俺達よりも先に来てたなら、商人グループのボスは?見かけたか」

「商人のボスはすぐ近くの酒場に入ってく所を目撃したって、情報は入ってるよ。見張りを任せてるけど、今の所は大きな動きはないかな。直接、ギルが足を運んでも良いと思うけど…」

ギルベルト君とランスロットさんが小声で話をしていて、話し終わったのか2人の視線が芣婭に注がれる。

ん、ん?どした?

内容は聞こえなかったけど、お仕事の話ぽかったな。

「ランスロット、コンラットとレヴァリオの2人を連れて行ってくれるか」

「分かったよ、ギル1人で大丈夫か。分かったよ、お姫様の事を危険な場所に置いて行ったら、妹に怒られちゃうし。コンラット、レヴァリオ、ちょっと」

ランスロットさんがコンラットとレヴァさんの2人を呼び、小声で再び会議を始める中、ギルベルト君の裾を掴んで声をかけた。

「ギルベルト君、ちょっといいかな?」

「ん?どうした?」

「ランスロットさんとお話してたみたいだけど、お仕事の話だよね?芣婭ね、お仕事の邪魔はしたくないの。あれだったら、行ってきても大丈夫だからね?」

芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、フッと口元を緩めてから口を開く。

「さっき、ランスロットと話していたが、奴隷商人のグループを束ねている男が近くの酒場にいると聞いてな。コンラットとレヴァオの2人に行かせる事にした」

「それって、ギルベルト君が行かなくても大丈夫そなの?」

「行ってきても良いんですよ、貴方。芣婭の事は俺達だけでも守れますし」

芣婭とギルベルト君の会話を聞いていたケロちゃんが、長い尻尾を芣婭の太ももに巻き付けて、頭をグリグリと押し付けて来る。

ベロちゃんも反対側の太ももに尻尾を巻き付けて、2人して上目遣いで見てきて可愛いが過ぎるんですけど。

ケロちゃんとベロちゃんが芣婭に甘えている姿を見て、ギルベルト君の眉間に深い皺が入る中、隣で見ていたランスロットさんが口元を押さえて笑いを堪えていた。

「プッ!ククッ…、ギルが、嫉妬深い男だとはねぇっ、あの仕事男が惚れた女の方を優先するとは思わなかったなぁ。お姫様が堅物だったギルを変えたって事か」

「えー!それは嬉し過ぎる!芣婭の愛がギルベルト君の事を変えてしまったのね、それは光栄侍なんだが!」

「ランスロット、この状況を楽しんでるだろ。男が逃げる前に、さっさと酒場に行け」

ギルベルト君はそう言いながら芣婭の腰を抱き、ランスロットさんに向かって手を軽く横に振った。

コンラットとレヴァさんの2人が芣婭に近付いてきて、コンラットが先に声をかけてくる。

「ギルベルト様、俺達は一旦、ここで失礼します。芣婭、ギルベルト様ちケルベロスの2人から離れないようにな」

「分かった!離れないから安心してよっ、レヴァさんも気をつけてね?ボスにね」

「フッ、ありがとうございます。では、行って参ります」

レヴァさんは芣婭とギルベルト君に頭を下げてから、コンラットと共に少し先を行っていたランスロットさんの元に向かって行く。

「芣婭、ギルベルト様、もうすぐ試合が始まるそうです。僕達も会場の中に入りましょう」

「会場?どこにあるの?」

「あの中さ」

パパがそう言って視線を向けた先には、テレビで見た事がるサーカス団がいそうな巨大いな赤色のテントがあった。

あれが会場と思いながら視線を向けていると、ケロちゃんとベロちゃんが嫌味を言い出す。

「なんだ?あんな中にあんのか?随分と安っぽい会場だな」

「あんなものじゃないですか?人間が作ったものですし。上品ではないでしょ」

「よーし、中に入ってみよう!ゼパ君は芣婭に抱っこされたままでいてね」

「分かりました!」

ゼパ君は力強く芣婭の胸に飛び込んで来たので、しっかり抱き締めてから芣婭達は巨大なテントの中に足を運ぶ。

テントの中に入ると、これまた動画で見た事がある格闘技会場にある大きなステージ、何故か周りに有刺鉄線が巻かれており、囲むように配置された観席がある。

観客席には続々と埋まって行き、芣婭達はステージと距離が近い席に腰を降ろすと、ケロちゃんとベロちゃんの耳がピーンと縦に伸びた。

「どしたの?2人共、耳が伸びましたけども」

「俺達以外の悪魔が3人にいるぜ」

「え、マジ?ダンタリオン様の仲間?それとも、サイコの方?」

「バフォメットの言ってた悪魔の可能性が高いが、気配の出し方が鬱陶しいんだよな。わざと出したり消したり、俺達に気付いてほしいような感じの」

ベロちゃんの小声で話していると、会場全体を照らしていたライトが消え、すぐにステージの上に立っているピエロの恰好をした男を照らす。

「今宵もお越し頂きまして、誠にありがとうございます。これより、お待ちかねのバトルロワイヤルが始まります。我が闇市場(ブラックマーケット)を代表するのは、この男!」

マイクを持ったピエロの恰好をした男が言葉を言い終えると、選手入り口の方にスポットライトが当たる。

ぺちぺちと誰かが素足で作られた道の上を歩いている
音が会場に響き渡り、選手入り口から出て来た人物は一瞬で、会場の中にいる客達の視線を奪う。

鍛え上げられた綺麗な筋肉、皮膚の腕から浮き上がった血管、グリーンアッシュの髪を靡かせて歩いてくる
姿は堂々としていた。

上半身裸だからか、服で隠れそうな部分に鞭で叩かれた傷跡が見え、綺麗な唇の端も切れ、ボロボロの状態なのに表情に辛さが出ていない。

「こんな時に言うのは不謹慎だけど、めっちゃカッコよくない?」

「「「はい?」」」

芣婭の言葉を言葉を聞いたギルベルト君とパパ、ゼパ君の3人の目が点になってしまう。

「あ、浮気じゃないよ!?ギルベルト君!ゼパ君からね?ご飯もちゃんと食べれてないって聞いてて、ガゼルっちかなり痩せてるのかなーって思ってたの。すっごい格闘家体型で、堂々としててさ?」

「あぁ、芣婭の世界にも格闘家っているんだな。確かに、商人達がガゼルの事を手放せない理由も分かる。あの男は奴隷じゃなかったとしても、人の目を引くカリスマ性を持っている」

ギルベルト君はガゼルっちに視線を向けながら、芣婭の手を取って自分の太ももの上に置く。

ガゼルっちの事も重要だけど、人間と取引してる悪魔の事も捕まえないといけないんだった!

「ギルベルト君、どうやって助ける?てか、芣婭さ?取引してる悪魔の事も捕まえないといけないんだよねぇ」

「公爵から魔法道具を借りて、既にこのテントの上に浮かせてある」

「魔法道具?」

「それはこれだよ、芣婭」

芣婭とギルベルト君の会話を聞いていたパパが、ジャケットのポケットから可愛らしい小ぶりのガラス玉を取り出す。

ガラス玉の中は透明の液体と混ざったラメが光り、ギルベルト君の言葉の雰囲気からして秘密兵器のようだ。

「これが魔法道具?どんな感じのなの?」

「これは時間差で爆破する小爆弾さ、爆殺したらこの中の液体が小鳥の姿に変わるんだ。黒騎士団(ブラックナイト)の騎士の方々は、これを突撃合図にしてるですよね?ギルベルト様」

「魔法道具を貸して頂いて助かりました、公爵。混乱に乗じて奴隷達を解放し、商人達を拘束し、ガゼルの救出を行う」

「おお、パパとギルベルト君の共同作戦だね!」

まさか、そこまで話が出来ていたとは思ってもいなかったんですど!?

芣婭のギルベルト君、しごでき過ぎませんか?

「これはあくまで俺に予想だが、ランスロット達の方にバフォメットだったか?ソイツが言っていた悪魔がいる可能性は高いだろう」

「え!?あ、ギルベルト君に言われて、気が付いたよっ!ランスロットさん達の方に行った方が、良かったかな…。今から合流するべき?」

「芣婭は命令しないのな」

「え?命令?」

「俺は空間魔法が使える悪魔だぜ?一瞬で奴等の所に行ける」

ベロちゃんはそう言いながら、少し不貞腐れた表情をして芣婭の太ももに顎を乗せる。

もしかして、芣婭が命令しないから気に入らないのかな?

「じゃあ、俺が芣婭の代わりに命令してあげますよ。アイツ等の所に行ってきて下さい、ほらはやく行ってきて下さい」

「だぁー!!!お前が俺様に命令してんじゃねーぞ!?誰が、お前の命令で行くかよ!!!」

「本当に行ってきてくれるの?ベロちゃん。芣婭は命令したい訳じゃないよ?」

ケロちゃんと言い合いをしているベロちゃんに声をかけると、照れくさそうに視線を逸らしながら口を開く。

「俺がそっちに行ったら、芣婭が喜ぶと思ってよ。あの人間共の事が心配なんだろ?コイツよりも、俺様の方が強いから行ってやっても良いと思ってよ」

「貴方、サラッと失礼な言葉を混ぜましたよね?何なんですか」

「お前は一旦、黙ってろ!良い感じにまとまってただろ!」

「芣婭、遠慮せずに命令して良いですよ。コイツ、ドМなんで」

「ここでやり合いたいのか、テメェー!!!」

2人の口喧嘩がじゃれ合ってるように見えてきたな…、可愛いくも見えてきた。

「お願いしてもいい?ベロちゃん。すっごく申し訳ないんだけど…」

「俺が行ったら、芣婭は喜ぶんだろ?だったら行ってやるよ。おいギルベルト、芣婭の事をちゃんと守れよ」

ベロちゃんがギルベルト君に声をかけると、ギルベルト君は芣婭の目を見てから、ベロちゃんの方に視線を向けて静かに頷く。

「ちょっくら行ってきてやるか、後でな?芣婭」

そう言うと、ベロちゃんは一瞬で芣婭達の前から姿を消すと、会場の中にドンッと大きな足音が響き渡る。

何事かと思い、音のした方に視線を向けると巨大なオ
ークが涎(よだれ)を垂らしながら、ステージに上がっていた。

「今回のオークは今、流行りのLovePoison(ラブポイズン)をしており、極度の興奮状態になっています。是非、お客様の目でLovePoison(ラブポイズン)の効果を確かめて頂きます!さぁ、まもなく試合が開始されます。皆様、ご準備は出来ていますか?」

ピエロの恰好をした男の言葉を聞いた観客達は、むちゃくちゃ盛り上がり始め、試合がされるのを待ち望んでいる。

観客達の目が気持ち悪すぎるんですけど、マジで。

「あんな大きなオーク相手で、大丈夫かな…」

「ガゼルはどんなに強い相手でも、1回も負けたことがないんだよ。ガゼルは誰にも負けない」

「ゼパ君が言うなら間違いないね!早く、ガゼルっちの事を助けようね」

「うん!」

「それでは試合を開始致します!」

ゼパ君と話していると、ぺエロの恰好をした男が試合開始を知らせるゴングを鳴らした。

カァァァンッ!!!

***

ガゼルとオークの試合が開始された直後、シュバルトが魔道具の小爆弾が破裂し、小さな鳥が暗くなった空に羽ばたく。

森の中から望遠鏡で空を見ていたヒューズが鳥の存在に気付き、待機していたローレンツ達に声をかける。

「ギルベルト様から突入の合図が出た、ローレンツ達は準備できてる?」

「問題ないよ、こっちはいつでも突入可能だ」

「よし、ダンテ達の部隊が闇市場(ブラックマーケット)に突入するから、俺達は商人達を捕縛しに行こ…、お?」

闇市場(ブラックマーケット)内に突入しようとしていたヒューズ達の前に、見た事がない紫色の魔法陣が現れると、中から口しかない真っ黒な人型をした化け物達が姿を現した。

「「キイエエエエッ!!!」」

四つん這いの体勢になりながら化け物達は、ヒューズ達に向かって奇声をあげながら走り出す。

「ギャアアア!!!なんだ!?この化け物共はー!!!」

「邪魔だ、どけ!」

「ゴフッ!?」

エリアに蹴り飛ばされたヒューズは地面に倒れ込み、向かってきた化け物の顔に容赦なく蹴りを入れる。

ドカッ、ブシャッ!!!

蹴りを入れられた化け物の顔だけが噴き飛び、離された首元から青色の血が引き出し、胴体は力なくヒューズの隣に倒れ込む。

ドサッ。

続々と紫色の魔法陣が現れ、中からは同じような化け物達が出現し、エリア達の前に立ちはだかる。

「これは、少し大事になってきたな」

自分達の前に現れた奇妙な化け物達を見たローレンツは、煙草を咥えながら楽しそうに言葉を吐いた。
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