ギャルが異世界にトリップしたら、暗殺一家の大公子とスパダリ婚する事になりました

28.異世界で、大捜査編開幕しまーす④

ヒューズ達が奇妙な生物と交戦している中、闇市場(ブラックマーケット)内に潜入していたダンテ達の前にも現れていた。

「キャアアア!!!何なの、化け物はっ!?」

「こっちに来るなっ!!!ギャアアアッ!!!」

ブシャアアアッ!!!

奇妙な化け物達は次々と訪れている貴族達に飛び掛かり、容赦なく首に噛み付き、鋭い牙が皮膚を突き破る度に血が噴き出す。

悲鳴を上げる女性に数体の化け物達が一斉に走り出し、先頭を走っていた化け物が大きく口を開けて、女性の顔に噛み付こうとした時。

「雷弾(サンダーバレット)!!!」

バチバチバチッ!!!

「グギャアアアッ!!!」

音をたてながら弾けた雷の弾丸が化け物の体を貫くと、全身に雷が駆け巡り、化け物は奇声をあげながら地面に倒れる。

「え、え?一体、何が起きたの?雷?」

「そこ退け、おばさん」

「は、はぁ!?誰がおばさんです…って…」

背後から生意気な言葉を使う少年の声が聞こえ、女性は怒りながら振り返ったのだが、少年の姿を見て女性は視線を奪われてしまう。

全体は黒髪だが、少し左側に分け目がある前髪だけがシルバーアッシュに染められ、色白の綺麗な肌にスモーキークォーツ色の大きな瞳、耳には煌びやかなピアスが光る。

ダンテと同じ場所に眉毛部分にピアスが空いている少年が立っていた。

気高い狼のような雰囲気の少年の着ている騎士服を見て、女性の顔色が一気に青ざめていく。

「ブ、黒騎士団(ブラックナイト)!?な、なんで、ここに…」

「チッ、ダンテ!本当に、ここにいる貴族達を助けないといけないのか?処罰さても、当然な奴等ばかりだろ」

「ボルフ、お前の気持ちは分かってる。だが、オルタニア様とギルベルト様の顔を立てる為、殺さずに生きたまま捕縛だ」

ボルフと呼ばれた少年の背後から現れたダンテと数人の団員達を見て、中年男性はダンテ達から逃げる為に走り出す。

「第3部隊長まで、ここに来てるって事は…、他の部隊の奴等も来てるのかよ!?クソッ、こんな所で捕まってたまるかっ!!!」

「あ、テメェ!待ちやがれ!!!」

「誰が待つか!私は最初から、ここにはいなかった!そうだ、ここにはいな…っ、グヘッ!?」

中年男性の事をボルフが追い掛けようとしたが、孔雀が男性の足を引っかけて地面に転ばせていた。

ドサッ!

孔雀はすぐに男性の鳩尾(みぞおち)を膝で押さえつけ、再び逃げ出さないように体の自由を奪うと、奇妙な化け物達が孔雀に襲い掛かる。

「「キイエエエエッ!!!」」

「水刃(ウォーター・カッター)」

ズシャッ、ブシャッ!!!

呪文を唱えると孔雀の手のひらに青色の魔法陣が浮かび上がり、見えない速さで化け物達の首が斬られ、傷口から血が噴き出す。

ドサッと化け物の胴体が地面に倒れ、返り血が孔雀の頬に付着し、ジャケットの裾で拭う。

「あぁ、ボルフ。面白い体勢をしてるけど、どうしたの?僕の事を笑わそうとしてる?」

「はぁ⁉んな訳があるか!!!おっさんが逃げ出そうとしたから、追いかけようとしただけだ!」

「はいはい、怒らないの。隊長、ローレンツさん達はまだ、こちらに来ていないようです。恐らく、こちらと同じような状況かと」

怒り出すボルフを宥めた後、孔雀は中年男性の体を縄で縛りながら、こちらに向かって歩いてくるダンテに声をかける。

「孔雀、お前も勘付いてると思うが、この化け共は下級の悪魔だろう。この騒ぎは白騎士団(ホワイトナイト)」

「悪魔⁉まぁ、確かに悪魔っぽい見た目だけど⁉」

「隊長も同じ事を思っていましたか、悪魔で間違いないと思いますよ。ボルフ、うるさいので静かにして下さい」

「なんだと⁉ムグッ⁉」

孔雀の言葉を聞いて怒り出そうとするボルフの口を塞ぎ、ダンテが話しが出来る状況を作った。

「どうぞ、隊長。ボルフを黙らせましたので、話しても大丈夫ですよ」

「あ、あぁ…、孔雀はボルフに対して、相変わらず厳しいな…。今はそんな事は置いといて、白騎士団(ホワイトナイト)に連絡が行っている可能性が高いって言いたかっただけなんだが…」

「アイツ等ですか、魔石洞窟の捜査を終えた頃だと思いますし。こちらに帰ってきていてもおかしくないですね、ガルバットが飛んで来そうですけど」

「来たって意味ないだろ、ここに来ていた貴族を罰する事はしないんだからよ。白騎士団(ホワイトナイト)の連中が来る前に、貴族の奴等を捕まえてくる」

「ボルフ、勝手に動かないでって…、ボルフ!」

ダンテと孔雀の会話を聞いていたボルフは、孔雀の呼び掛けを無視して走り出し、第3部隊の団員達を合流する。

「全く、僕の言う事は全然聞かないんだから…。ここにも来たくないって言っていたのに、今回は僕達と一緒に行くと言い出したり…。子供の考えは、よく分かりませんよ」

「アイツは、オルタニア様とギルベルト様の役に立ちたいんだろう。うちの騎士団は、ギルベルト様が救った元奴隷だった奴等が多いだろ?ローレンツにの部隊の奴等を見たら分かる」

「まぁ、それもあると思いますけど。僕の目から見れば、隊長の役に立ちたいんだなって思いましたけど」
「俺?そうか?」

「えぇ、眉のピアスを開けたのも隊長の真似でしょうし」

孔雀の話を聞きながら、ダンテは背負っていた黒色の巨大な斧を手に取り、再び現れた奇妙な化け物達を見ながら構えた。

***

甘野芣婭達と別れたランスロット達は、商人達を束ねる男がいると言われている酒場に向かっていたのだが、3人の前に化け物達が姿を現す。

ズシャッ!!!

コンラットはすぐに腰に下げていた剣を抜き、ランスロットに近付こうとした化け物の手を斬り落とした。

「キイエエエエッ!!!」

「ランスロット様、お下がりください」

「おー、流石だな。いつ、剣を抜いたのか分からなかったよ」

「ちょっ、俺に話を聞いてなかったんですか?後ろに下がらないと、怪我しますよ」

「僕はね?基本、単独行動派なんだよ。こんな下級悪魔に殺されたりしないさ」

そう言って、コンラットの前に出たランスロットは、「極小闇球(ミニマム・ダークボール)」と呪文を唱える。

ランスロットの指先に紫色の魔法陣が現れ、ビュンッと紫色の小さな光が走った瞬間、化け物達の頭は弾け飛ぶ。

ビュンッ、ブシャッ!!!

小さな光は次々と化け物達の頭や腕、胴体を破壊し、攻撃を受けた化け物達はランスッとの足元に力なく倒れた。

ドサッ。

「今のは闇魔法の一種ですよね?極小闇球(ミニマム・ダークボール)は威力が小さいと聞いてましたが、そうでもないんですね?」

「ん?あの魔法は威力は小さいよ。魔道具を使って威力を上げてただけさ」

レヴァリオの質問に答えながら、右手の中指にはめられた大きなオレンジ色の魔石がついた指輪と、左手首につけられた緑色の魔石がついたブレスレットを見せた。

オレンジ色の魔石は魔法の威力向上の効果があり、緑色の魔石は魔法のコントロール上昇効果がり、魔道具を作る時には必須な魔石たとである。

「魔道具を使って、魔法の威力とコントロール能力を上げたんだ。下級の悪魔が出現してるって事は、酒場に悪魔がいるって事を確信を持てたな」

「リーダーの男と悪魔が取引をしてるから、邪魔をさせない為に下級の悪魔を召喚しているとう言う事でしょうか」

「んー、ちゃんと対等に取引が出来てると思う?レヴァリオ」

「直接、この目で見た訳ではないので確証を持って言えませんが。無理でしょうね、何かしらの対価を支払わされてると思います。悪魔との取引はそれ相応の犠牲があるとも」

「グアアアアアアッ!!!」

「「「っ!!!」」」

ランスロットとレヴァリオが話をしている時、酒場の2階から男の叫び声が聞こえ、3人は急いで酒場に向かって走り出す。

バンッ!!!

先頭を走っていたコンラットが酒場の木のドアを蹴破りると、酒を飲んでいたであろう客達が血を流して床に倒れている光景が広がっていた。

耳や目、鼻から血が流れ、泡を噴いている者が多く、皮膚も青紫色に変色しており、レヴァリオはすぐに毒の影響だと気付く。

近くに倒れている女性の店員の首に軽く触れ、脈拍を確認したコンラットは2人に向かって頭を振る。

「毒を盛られて亡くなった可能性があります。皮膚が青紫色に変色し、口からは泡を噴いていますので」

「酒に毒が盛られていて、客達は知らずに飲んで亡くなったって所か。妙な気配がするな、2階から」

「えぇ、人の気配ではありませんね。魔物の類(たぐい)でもないような気もしますが」

「ランスロット様、今回は本当に下がっていてくださいね」

コンラットとレヴァリオは戦闘態勢に入り、その様子を見ていたランスロットは今回は大人しく指示に従う。

ランスロットが大人しく従ったのには理由がある。

2階から垂れてきている赤黒い液体を見て、何かが起きている事は明白だったからだ。

謎の赤黒い液体が血液だと分かったが、ランスロットは人間の体内から流れ出た血液の量をはるかに超えていると分かっていた。

2人は警戒しながら階段を上り、血が流れ出ている部屋に向かって歩いて行く。

キィィ…。

コンラット達が部屋に到着していないのに勝手に扉が開き、中から出てきたのは頭が半分を脳虫に喰われている体格の良い男。

「クチャ、クチャ、クチャ…ッ」

「「っ⁉」」

脳虫は今も男の顔を食べているのか咀嚼音が聞こえ、異様な姿の男を見て、コンラットとレヴァリオの2人は男に向かって剣を構える。

「何ですか、あれはっ⁉脳みそを食べられているって事ですか?どういう状況ですか、これは…」

「あ、あがっ、あががががっ!!!」

目の前で苦しむ男の姿を見ても、レヴァリオは状況を理解出来ないでいた。

「ジャガル・ロマイ、38歳。伯爵家の生まれで、後継者になる予定だったが素行の悪さが目に余り、妹の婚約者が婿入りして後を継いだ。変な虫に脳みそを食われている男の素性さ」

「この男がこうなったのは悪魔の仕業…という事ですね」

ランスロットの言葉を聞きながら彼を後ろに下がらせ、近付いてくるジャガル・ロマイの前に2人が立つ。

ジャガル・ロマイの背中から6本の蜘蛛の足が現れ、コンラットとレヴァリオの視界に大量の大きい蜘蛛が赤い目を光らせる。

蜘蛛達の中から姿を現したバエルは、顔が整っているコンラット達に視線を向けながら微笑んだ。

「あれぇ?毒にやられてない人間が3人もいるぅ、それも顔が良い男の人だぁ」

「貴方、この男と取引していた悪魔ですか」

「そうだけどぉ?でも、この不細工(ブサイク)な男を探しに来たの?もう、普通に話す事は無理じゃなかなぁ。意思疎通できなくなってると思うし、お兄さん達が子供だったら良かったなぁ。大人の男は口に合わないんだぁ」

レヴァリオの問いに答えたバエルは、自身の手のひらから紫色の刃の鎌を取り出し、蜘蛛達が一斉にコンラット達に向かって走り出す。

「爆発(エクスプロート)」

パチンッ。

ボォォォンッ!!!

コンラットが呪文を唱えて指を鳴らすと、目の前に赤色の魔法陣が現れ、自分達に向かって来ていた蜘蛛達を炎が覆い被さり眩い光を放った瞬間、大きな音を立てて小規模の爆破が起こる。

ブンッ!!!

バエルは鎌を思いっきり振り翳し、灰色の煙を真っ二に斬り裂き、口角を上げた状態のバエルがレヴァリオに鎌を振り下ろした。

キィィンッ!!!

レヴァリオは剣を片手で持ち替え、バエルの攻撃を受け止め、すぐに「風檻(ウィンドジェイル)と呪文を唱えるとバエルの足元に緑色の魔法陣が現れる。

魔法陣が現れた瞬間に暴風が吹き荒れると檻の形に形成され、バエルと閉じ込めるがレヴァリオの左腕と右脚に細い雲の糸が巻き付く。

バエルの配下である蜘蛛達が糸を出して、レヴァリオの体を拘束しようとしたが、ランスロットは壁に備えられたランプを蜘蛛達に投げつけた。

ブンッ!!!

投げられたランプに向かって、コンラットが手を広げた状態で「炎撃(フレイムショック)と呪文を唱えると、手のひらに赤色の魔法陣が出現し、ランプに向かって炎が放たれる。

ブォォォッ!!!

ランプの油が更に炎を燃やさせ、大きくなった炎に蜘蛛達は逃げる事が出来ずに悶え苦しみ、レヴァリオの手足を拘束していた蜘蛛の糸も燃えていく。

「「キイエエエッ!!!」」

「あーあ、僕の可愛い蜘蛛ちゃんが燃やされちゃったぁ。人間数人だけじゃ、弱い蜘蛛ちゃんしか作られないかぁ。選り好みしてる場合じゃないかも」

「君がこの男に血液を渡して、薬を作れるようにしていたんだね?取引の対価を得る為?それとも別の理由があるのかな、悪魔バエル」

「何で、僕の名前を知ってるの」

ランスロットに名前を呼ばれたバエルは、無表情のままランスロットに視線を向けた。

この世界に住む人間達は悪魔の存在は知っているが、名前までは知らない者の方が多く、悪魔崇拝者か悪魔辞典や悪魔が出て来る物語を呼んでいない限りは知らない。

バエルはランスロットを危険人物として見る目を変え、この男がアスタロトの邪魔になりえるとまで思考を巡らせていた。

ダンタリオンの元についている悪魔がいれば、アスタロトの元についている悪魔もいる。

バエルはアスタロトの配下として席を置き、バエルは配下の中でもアスタロトの忠誠が高い。

カチャッ。

鎌を握る手に力が籠り、バエルは風檻(ウィンドジェイル)を鎌を振り下ろして破壊し、バエルの足元に魔法陣が浮かび上がった。

「蜘蛛の騎士(スパイダーナイト)」

ドンッ!!!

バエルが呪文らしき言葉を吐くと、魔法陣の中から武装した巨大な蜘蛛が召喚され、バエルの前で跪く。

「「っ⁉」」

コンラットとレヴァリオの2人は一瞬だけ驚くが、すぐに剣を構え直して召喚された巨大蜘蛛から距離を取って、コンラットはランスロットに声をかける。

「ランスロット様、ここは俺達が対応します。貴方は俺の側から離れないで下さい」

「おいおい、そんな台詞は僕じゃなくて女性に言うものだよ?コンラット」

「こんな時に茶化さないで下さいよっ。あの悪魔、貴方に狙いを定めてた事を勘付いていますよね」

「へぇ、頭が良いんだね?君」

ランスロットとの会話を聞いていたバエルは、鎌をクルクルッと振り回し、ランスロットに視線を向けた。

「ここで、僕に大人しく殺されてくれないかな?簡単に死んでくれた方が、僕も助かるんだけどなぁ」

「まだまだ、やりたい事が沢山あるんだよねぇ。簡単に殺されないよ?僕は」

「…、蜘蛛騎士(スパイダーナイト)。前の2人の首を跳ねて来い」

「キイエエエッ!!!」

バエルの命令を受けた|蜘蛛騎士《スパイダーナイ
ト》は奇声を上げながら、コンラットとレヴァリオの2人の元に走り出した時。

天井に灰色の魔法陣が浮かび上がり、ドンッと力強く蜘蛛騎士(スパイダーナイト)を踏みつけた人物を見て、コンラットとレヴァリオの2人は驚く。

ブシャアアアッ!!!

力強く頭を踏みつけられた蜘蛛騎士(スパイダーナイト)の頭から勢いよく青色の血が噴き出す。

「「ケルベロス⁉」」

「あー、やっぱり俺様が来て正解だったな?お前等。何百年ぶりだ?バエル」

「ケルベロス…」

返り血塗れのベロちゃんに声をかけられたバエルは、唇から血が滲む程の力で唇を噛んだ。

***

甘野芣婭 (17歳)

試合開始のゴングが鳴らされ、最初に攻撃を仕掛けてきたのはオークだった。

「グオオオオッ!!!」

ブンッと力強く拳を振り下ろしすが、ガゼルっちは涼しい顔をして拳を避けて、オークの拳に乗り移った状態で走り出す。

「何と言う事でしょうか!攻撃を避けたガゼルは、そのままオークの腕の上を走って行きます!こんな事は、ガゼルしか出来ないでしょう!」

ピエロの恰好をした男の解説を聞いた観客達の歓声が上がり、会場の空気が一気に熱くなる。

オークがガゼルっちの事を使えようとするが、ガゼルっちはするりと振り翳された手の指の隙間を潜り抜けて行く。

肩の部分に辿り着いたガゼルっちは、ピョンッとオークの頭上まで飛び、そのまま勢いよくオークの頭に踵落としを喰らわす。

ブンッ、ドゴォォンッ!!!

「グアアアアッ!!!」

「身体強化(フィジカルブースト)」

体勢を崩したオークの右頬に思いっきり回し蹴りを入れると、オークは体勢を崩したままステージに倒れた。

ガゼルっちの軽やかな技達は観客の心や視線を釘付けにし、会場に再び歓声と熱気に包まれる。

「え、待って、めちゃくちゃ強ない?ガゼルっち。獣人って、みんな強いの?ギルベルト君」

「普通の人間と比べて力も強く、身体能力が高いが。ガゼルは身体強化(フィジカルブースト)を使っている可能性が高い」

「フィジ?」

「身体強化の事さ」

「あー、異世界バトルもので聞いた事あるワードだ!」

ガゼルっちはその身体強化(フィジカルブースト)ってのを使って、体を強化させてるにしても強いって事じゃないのかな…?

普通に試合に見入っちゃうよ、これは。

「やっぱり、今回もガゼルが勝つか⁉」

「いやいや、まだ分からないぞ?なんせ、例の薬を使ってるんだからな」

前の席に座ってるおじ貴族の会話が聞こえ、再びステージに視線を向けると、その会話は撤廃される事になる。

「グオオオオッ!!!薬を寄越せええええええっ!!!」

四つん這いの状態のままオークはガゼルっちの元に向かって行くが、ガゼルっちは呼吸を整えてからオークの額に拳を捻じり込ませた。

ドゴォォンッ!!!

ゴキゴキッ、ブシャアアアッ!!!

ガゼルっちの拳を受けた影響で頭蓋骨が破壊され、鼻と口から血が噴き出し、後ろに倒れそうになった所をガゼルっちが追いかけて行く。

ダンッとステージを強く踏みつけて顔の近くまで飛び、そのままオークの顎を蹴り上る。

ドカッ!!!

「グハッ!!!」

「さっさと逝け」

ガゼルっちば囁くように言葉を吐いた後、オークの頬を両手で掴んだ状態で力強く顔を、本来は曲がらない方向にクルッと曲げた。

ゴキッ!!!

ギルベルト君が芣婭の両目を優しく手で塞ぎ、ステージの上で起きている光景を見せないようにしてくれる。

骨の折れる音が聞こえた時点で、ガゼルっちがオークに何をしたのか分かるし、この試合の勝者が誰なのかも分かった。

思った以上に、バトルロワイヤルで行わいる試合は命がけのものだって思い知らされた。

観客の騒がしい歓声の中で、芣婭に抱っこされているゼパ君だけは小さく泣いている。

「キャアアアッ!!!」

「「っ⁉」」

バトルロワイヤルの会場内に女性の悲鳴声が響き渡り、何かが会場内で起きている事は声を聞いただけ想像がつく。

「え、え⁉何か起きてる感じ⁉」

「何だ?あの化け物は」

「化け物⁉どれどれ?」

芣婭はギルベルト君の手を瞼から退けて見ると、なんか口しかない真っ黒な人型の化け物達が観客達に襲い掛かっていた。

「おおおお⁉とんでもない状況になっとるぅぅ!!!」

「あれは下級悪魔ですね、人間を好物としています」

「え⁉人間を食べるの⁉肉食なんだね⁉」
「芣婭、俺から離れないで下さい」

ケロちゃんはそう言って人の姿に戻り、芣婭達に向かって来る化け物に向かって手を伸ばす。

「闇弾(ダークバレット)」

呪文を唱えるとケロちゃんの周りに魔法陣が何個か現れ、中から細長い弾丸が出現し、向かってきている化け物達の体に弾丸が当たる。

ブシャッ、ブシャッ!!!

「「キイエエエッ!!!」」

「ギルベルト様っ、この化け物達は会場の外にもいるようですっ」

パパの言葉を聞いたギルベルト君は、舌打ちをしながらネクタイを解き、腰に下げていた黒色の剣を抜く。

「ヒューズ達が来ないと思ったら、化け物共が邪魔しに来ていたのか。芣婭、俺達の側を絶対に離れるな」

「りょ、了解!ゼパ君、しっかり掴まってて!」

「は、はい!」

ゼパ君の事を強く抱き締めながら、ギルベルト君の背中に隠れようとしたが、会場から出ようとする観客達に飲まれてしまう。

「うわっ⁉」

「芣婭っ!!!」

「おい、早く進めよ⁉あんな訳の分からない化け物に殺されてたまるか!」

「ちょっと!今、私の足を踏んだでしょ⁉」

ギルベルト君が差し出してくれた手を掴めないまま、芣婭とゼパ君は人の波に流されていると、化け物がこっちに数匹飛んでくるのが見えた。

芣婭の元に来ようとしても、3人は人を掻き分けながらでしか前に進めない状況だ。 

「ちょ⁉マジか‼今、こっちにこられると困るんですけど⁉」

「キイエエエッ!!!」

ゼパ君だけは守らないと!

そう思うながらゼパ君を強く抱き締めて背中を丸めた時、ゴキッと骨の折れる音が聞こえ、力強く体を掴まれる。

「あっ」

「ゼパ、怪我は」

逞しい大きな手が芣婭の腰を優しく抱き寄せられ、顔を上げるとガゼルっちが人の波を掻き分けて、汗だくになって芣婭とゼパ君の元に来ていた。

 
< 29 / 35 >

この作品をシェア

pagetop