愛と優しさのちょっとした話。
【 1時間目:美術 】
自分なりのオブジェ制作、の授業。
海中は美術担当の先生がゆる〜いので、授業は基本自由席。
「じゃあ制作始めてくださーい」と先生が言うと、全員がいつも通りの席に座りに行く。
わいわい絵を描いたり制作に入ったりしている8のテーブル。
そのうちのひとつ、謎にキラキラオーラを放つテーブルが……?
「うわ、やっぱ絵うまいよなー冴」
「そう?」
「風優は壊滅的すぎる」
「何描いてるかわかんないよね」
「いやコレはどう見ても鳥じゃん!? 羽じゃん!」
「……鳥だったの……」
「……鳥……?」
「ひどっ」
生徒会男子3人組が集まるテーブルだった。
冴斗と海が廊下側、風優は反対側にひとり座っている。
前回の授業で描いたアイデアスケッチを見ながら、冴斗は寸法計算、海は修正、風優は「どうやったら一般的な鳥になるのーっ」とかなんとか言いながら頭を抱える。
「風優、センスはあるんだから模写とかしたら。美術室だし、資料置いてるでしょ」
「確かに。せんせー! 資料どこー? 動物のが欲しいんだけどーっ」
冴斗にアドバイスを受けた風優は、早速先生に声をかけて準備室に消えていく。
消しゴムをかけてまた描いて、消しゴムをかけてまた描いてを繰り返す海を見て、冴斗が口を開く。
「海はどんなの作るの」
「海」
「そのまんまなんだ」
「冴斗は」
「空」
「聞く必要なかったな」
淡々としたふたりの短い会話。(もはや会話なのか??)
無言になって作業再開、いつのまにか風優が先生を連れて帰ってくる。
「……わぁ、色織くんすごーいっ。アイデアスケッチから綺麗だ! ホント器用だよねぇ」
美術科教師(3年目、若くて綺麗なレディ)の早坂先生にスケッチブックをのぞかれた冴斗は、小さく「ありがとうございます」と呟いた。
「中上くんも、絵上手だよね! 制作頑張ってね」
「はい」
海はばっちり笑顔を決めてうなずく。
「……先生」
冴斗がふと顔を上げた。
「なぁに?」
「風優のそれ、何描いてるかわかりますか」
「……」
その間10秒。
「……と、鳥?」
「なんでそんな自信なさげなのさ先生〜っ。あってるよ! 当ててくれてありがとうございますー!!」
「あってる!? よかったぁっ」
本気で安堵する先生をちらりと見て、海は冴斗をひじで小突いた。
「冴斗、あんまり早坂先生いじめんなよ。答えにくい質問すんな」
「……だって、なんか、楽しくなってくるよね。小さくて、若くて、素直で、キレイ」
「おっまえさぁ……」
今の冴斗の目には、黒い瞳とその奥でちらりと光り燃ゆる青い炎、という表現が合う気がする。
にこにこ嬉しそうに笑う冴斗の悪戯(サド)癖に、海は呆れのため息。
(クラスのみんな、心の声:色織/冴斗くん が笑ってる! めっちゃ嬉しそうにニッコニコで笑ってる!! 会長が呆れてる! いつも通り! 風優/くんはしゃいでる!! すっごいビジュすっごい!!! あそこなに!? 神域!?!? 笑ってるよあの冷淡書記長こと天才美男子が笑ってるよ!?)
結局、冴斗は制作に入り、海はスケッチと寸法を迅速に終わらせ、風優は鳥の模写に戸惑って終わった美術。
【 1時間目〜2時間目の10分休み 】
「冴斗、そっちの廊下じゃない。ここは北館。教室は南館。だからもっと向こうの階段」
「え」
「あっ、ちょっ、冴! 前見てっ!」
ごちっ
「わう」
「痛そー。だいじょぶ? 冴」
「だいじょぶ」
「冴斗、いい加減覚えてくれ。そんなにデカいわけでもないのに、過ごすの3年目の校舎歩けないとか……」
「海が案内してくれるでしょ」
「まぁするけど」
「そんなだから覚えれないんだよ冴はーっ」
「覚える気ない」
「自分で言ったぁっ」