キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました
授業の合間も、頭の片隅にはずっと保健室のことがちらついていた。
もし本当に、あの人の目覚まし係なんてものを何日も続けることになったらどうしよう。
一ヶ月も、もたずに終わる関係ばかりの人と、これから毎日顔を合わせることになるなんて。
そんな不安を抱えたまま、私は午前中の授業をやり過ごした。
◇
そして、やって来た昼休み。
あと十五分ほどで、昼休みが終わる頃。私は廊下を歩き、保健室のドアの前で足を止めた。
木製のドアを見つめたまま、大きく深呼吸をする。ドアノブに伸ばした手が、緊張でほんの少しだけ震えていた。
──やっぱり、引き返そうか。
一瞬、そんな考えが頭をよぎる。
別に私じゃなくても、他に先輩を起こしたい女の子なんてごまんといる。
さっきの梨沙子みたいに、心から彼を慕っている子のほうが適任のはずだ。
だけど昨日、あの派手な先輩たちを背に『生きて帰れないかもよ?』とニヤリと笑った須藤先輩の顔が浮かんで、私は背筋を凍らせた。
ここで逃げて約束を破ったら、明日からもっと恐ろしい目に遭う。
それに、約束したことをちゃんと守るのは、自分にとって当たり前のことでもある。
覚悟を決めてドアを開け、静まり返った室内を進む。
窓際のベッドを覆う、薄い黄緑色のカーテン。その向こうに、あの人がいる。
カーテンの端をつかみ、息をのんで意を決して布地を引いた。