キスを拒んだら、学校一の沼男に捕まりました

こんな話も日常茶飯事みたいに扱えるくらい、須藤先輩の恋愛遍歴は有名なんだ。

「かっこいいよねぇ、海里くん。ねぇ、咲奈もそう思わない?」

「うーん、そうだね。あはは」

「何? その反応〜! まぁ、好みは人それぞれだけど」

確かに、須藤先輩はかっこいいけど。かっこいいけどさ。

昨日、あんなことがあった身としては、梨沙子に素直に共感できないっていうか。

頭突きされて『いってぇー』って涙目になってた顔を知ってる身としては、正直そこまで神格化できないんだけど……!

それに、今聞いた話のせいで、素直に「かっこいい」なんて言えない気持ちも、ちょっとだけ混ざっている。

心の中でこっそり突っ込みながら、私は曖昧に笑ってやり過ごす。

「ああ〜もう、海里くん大好き」

梨沙子が雑誌の先輩に向かって、愛を叫ぶ。

どこが良いんだろう、あんな先輩。

……なんて思ってから、はたと気づく。

私、これから毎日あの人の顔を、雑誌の写真じゃなくて生で拝む羽目になるんだった。

もし梨沙子に『私、須藤先輩の目覚まし係やってるんだ』なんて知られたら……想像しただけで恐ろしい。ファンに殺される未来しか見えない。

「私は絶対、梨沙子みたいに好きになんてならないんだから」

小さく呟いた独り言は、雑誌に夢中な梨沙子には届かなかったみたいで、幸いだった。

ああ、昼休み……今から憂鬱だなあ。
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