保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
須藤先輩が、一瞬きょとんとした顔をする。
「ああ、リンは俺が家で飼ってる犬だよ」
いっ、犬!?
えぇっ、まさかのワンちゃんなの?!
「咲奈ちゃんに言おうとしたけど、聞いてもらえなかったからさ。ほら、見てよ。これが、我が家のリンちゃん」
先輩が見せてくれたスマホの画面には、愛くるしい白のポメラニアンが映っていた。
「かっ、可愛い……!」
「だろ? こいつ、いつも朝になると俺のことを起こしに来てくれてさ。とにかく可愛いんだよ」
先輩の目尻が下がる。
ペットを愛おしいと思う気持ちは、私も家でチワワを飼っているから分かる。それなのに、私は……。
「ごっ、ごめんなさい。まさかリンちゃんが、ワンちゃんだとは思わなくて」
私は、先輩に深々と頭を下げる。
夏休みの間中、てっきり誰か女の子だと思い込んで、ひとりで勝手に傷ついていた自分が、なんだか急に馬鹿らしくなる。
「いやいや、俺も悪いからさ。ちゃんと最初に説明してれば良かったのに」
先輩が続ける。
「だけど、咲奈ちゃんと離れてたおかげで俺、自分の気持ちに気づけたんだ。こんなこと言っても、信じてもらえないかもしれないけど。俺……咲奈ちゃんのことが好きだ」
うそ。
「先輩が、私のことを好き……?」
「ああ」
「沢山いる女の子のうちの一人とかじゃなくて……?」
「もちろん、咲奈ちゃんだけだよ」
須藤先輩が、真っ直ぐ私を見つめる。