保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
「私も、先輩のお仕事のこと、応援したいです。だから、無理に隠さなくちゃいけないことがあるなら、ちゃんと言ってください。私も、一緒に考えたいので」
「……咲奈ちゃんって、本当に強いよね」
先輩が、目を細めて笑った。
「じゃあ、とりあえず今は、二人だけの秘密ってことで。田村さんたちにも、事務所にも、まだ言わない。それでいい?」
「はい。それで、大丈夫です」
まだ何も解決していない問題は、山ほどある。
田村先輩たちに、これからどう思われるだろう。
学校中の噂になったら、きっとまた騒がしくなる。
先輩の仕事にだって、いつか影響が出るかもしれない。
それでも、これから始まる海里先輩との新しい関係に、私の胸はいっぱいだった。
不安と、それを上回るくらいの幸せと。
そのふたつを抱えたまま、私たちはベッドから立ち上がり、乱れた制服と髪を整える。
保健室の扉に手をかけた先輩が、ふと振り返った。
「咲奈」
「はい?」
「改めて、これからよろしくね」
たったそれだけの一言なのに、これまでとは違う重みを持って、胸に届いた。
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
そうして私たちは、体育祭の喧騒が続くグラウンドへと、ゆっくり戻っていった。