保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
「はい。もちろんです」
「良かった。断られたら、しばらく立ち直れないところだった」
冗談めかしてそう言いながらも、先輩の声には、確かな安堵が滲んでいた。
「改めて、これからもよろしく。咲奈」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします、海里先輩」
肩を寄せ合いながら眺める夕焼けは、いつもよりずっと綺麗に見えた。
「可愛い」という言葉を、もう疑わずに受け取れる自分がいる。
まだ知らないことも、これから増えていく秘密も、たくさんあるだろう。
だけど、海里先輩と一緒なら、きっと大丈夫。
そう思える自分に、少し前の私はきっと驚くだろう。
部屋の中から、リンちゃんが小さく「くぅん」と鳴く声が聞こえた。
まるで、私たちの新しい始まりを、そっと見守ってくれているみたいだった。
──こうして始まった、ふたりの日常は、これからも少しずつ、続いていく。