保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました
先輩に案内されて入った彼の部屋は、意外にもシンプルな内装で、壁には仕事で使ったのだろう雑誌の切り抜きが、控えめに一枚だけ飾られていた。
「これ、俺が一番気に入ってる写真」
「見せてください」
写真の中の先輩は、学校での顔とも違う、夕暮れの光の中でどこか柔らかく微笑んでいた。息をのむほど綺麗で、思わず見入ってしまう。
隣に並んで写真を覗き込むと、自然と肩が触れ合う距離になった。
「咲奈、近くない?」
「先輩が見せてくれたんじゃないですか」
「いや、嬉しいから別にいいんだけど」
そう言いながら、先輩が私の肩に、そっと自分の頭を預けてきた。
「な、なんですか急に」
「別に。ただ、こうしていたい気分」
甘えるような声に、耳の先がじんわりと熱くなる。
窓の外は、少しずつ夕暮れの色に染まり始めていた。
それから、先輩の部屋のベランダに出て、夕焼けに染まる街並みを一緒に眺めた。
「なぁ、咲奈」
「はい」
「これからも、目覚まし係──じゃなくて」
先輩が、少し言い直すように、こちらを向く。
「彼女として、俺の隣にいてくれる?」
「あ……」
「目覚まし係も嬉しいけど、それは二の次。俺が本当にいてほしいのは、俺の彼女としてなんだ」
まっすぐな瞳で、先輩がそう言った。