ホテルオーナーの執着愛~地味でぽっちゃりな私にだけ甘すぎます~
「隠さなくてもいいのに。それとも海崎オーナーに知られたくないから?」

「はい?」

「ライバルになりようがないと思ってたんだけど、一番オーナーに話しかけられているのは杏野さんなのよね。まさか、乗り変えようとしてる?」

それは怜奈の方だろう。

海崎が従業員の前で挨拶した時に、交際相手と別れると言っていたのは覚えている。

(それに譲は私と結婚してるんだよ)

悔しいが、反論は心の中だけにして会話を切り上げる。

「急いでいるので失礼します」

怜奈に背を向けて数歩進むと、今度はオーナー室から海崎が出てきて足を止められた。

「杏野さん、おつかれさま。今、上がったところ?」

「はい。おつかれさまです」

「ちょうど私も帰るところなんだ。よかったら一緒に――」

後ろから怜奈にドンとぶつかられた。

(わっ!)

体重があるのでビクともしなかったが、耳元で大きな声を出されて肩をビクつかせる。

「私がご一緒します!」

「君は勤務中だよな? 早く持ち場に戻りなさい」

「待ってください。今すぐ、早退をお願いしてきますので」

怜奈がしつこくしても海崎は断れる人なので心配いらない。

「すみません、私は急いでいますので失礼します」

頭を下げてその場を離れた鈴花はロッカールームで着替え、裏玄関から外へと飛び出した。

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